巨人監督のクビを飛ばした!? 「珍プレーの帝王」ブリンソンの“とんでもないプレー”

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「恥ずかしいプレーでしたね」

 その後、5月31日のロッテ戦で内野陣との呼吸の乱れから“中前二塁打”を献上したブリンソンは、8月9日の阪神戦でも攻守にわたって、ほとんど“お約束”と化した珍プレーを披露する。

 0対0の5回1死、中堅フェンス直撃の快打を放ったブリンソンだったが、てっきり本塁打だと思い込み、ゆっくり走った結果、一塁止まり。結局、この回は無得点に終わり、原監督も怒りを通り越して、思わず笑ってしまった。

「あれはもう、ほんとに、志す少年たちに対して、すべての野球人に対して、私の指導不足というところで、恥ずかしいプレーでしたね」(原監督)。

 さらに2対2の延長11回1死満塁、ブリンソンは梅野隆太郎の詰まった中前安打を処理後、本塁ではなく三塁に送球したため、中ゴロによる得点も含めて一挙3点を失う羽目に。この結果、首位・阪神に連敗し、10ゲーム差に開いた巨人は開幕から99試合目で早くも自力Vが消滅した。

 そんなブリンソンが久々に好プレーを見せたのが、8月22日のヤクルト戦。1対4と劣勢の巨人は6回2死一、二塁のチャンスに大城卓三が中前安打を放ち、本塁送球が二塁走者・丸佳浩の太ももに当たる間に一塁走者・ブリンソンも三塁を回った。

 だが、ボールがベンチに入ってボールデッドが宣告されると、ブリンソンは残念そうに三塁に戻ったが、センターが送球した時点で、すでにブリンソンが二塁を回っていたことから、ラッキーな得点が認められる。この2点がきっかけで巨人は8対4と快勝。ボーンヘッドを連発するたびに悪態をついていたファンも「ブリンソンよく頑張った」とこの日ばかりは賛辞を惜しまなかった。

「フォローできる言葉がなかなか見つからない」

 しかし、株を上げたのもつかの間、9月1日のDeNA戦では、1対4の4回2死一塁、ブリンソンは桑原将志の中堅フェンス近くへの飛球を、落下点に入りながらグラブに当てて落球。リードを4点差に広げられ、「ちょっとフォローできる言葉がなかなか見つからない」と原監督を嘆かせた。

 さらに5回の攻撃では、浅野翔吾が中飛に倒れた際に一塁走者・ブリンソンはスリーアウトなのに2死と勘違いして一塁に戻る珍走塁を演じ、大勢には影響なかったものの、原監督の顔面を怒りで紅潮させている。3位・DeNAとの3連戦初戦に敗れ、3ゲーム差に広げられた巨人は9月29日に同一監督では球団史上初の2年連続Bクラスが決定。原監督の退任も事実上この日に決まったと言っても良い。

 攻守にわたる軽率なプレーに加え、打率.248、11本塁打、35打点と物足りない成績に終わり、結果的に原監督の首を飛ばしてしまったイメージも強いブリンソンだが、一部のファンの間で「起用するのは怖いが、捨てるのは惜しい人材」「もう少し見たかった」など1年限りの退団を惜しむ声があるのも事実だ。

 巨人の助っ人史上、最も記憶に残る愛すべき“珍プレーの帝王”として名を残したことだけは間違いない。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

デイリー新潮編集部

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