組長の仕事は? なぜ抗争は終わらない? 山口組への「素朴な疑問」について徹底解説

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高山氏が引退しない限り…

 一方、高山氏の組織改革の真の狙いは権力構造の刷新にありました。渡辺芳則五代目の旧政権で横行した組長側近=「組長秘書グループ」による「政治の私物化」を一掃すること。歪んだ「二重権力」状態の復活を阻止するために、自分以外の執行部メンバーと組長との接触を禁じます。が、「われらこそ存分に運営に力を振るえる」と意気込んでいた執行部の重鎮メンバーからは大いなる不興を買います。組長を動かすのは高山氏ひとりの専権事項となり、他の重鎮は「顧問」など形ばかりの窓際に追いやられ、遅かれ早かれお役御免となり、放り出される。かつての栄耀栄華の時代へのノスタルジーさりがたき守旧派の頭目たちが感じた不安は想像に余りあります。

 いまも反六代目の旗を掲げ続けている分裂の首謀者は、「高山若頭がやめれば(離反騒動は)終わる」、つまり、不倶戴天の敵となった高山氏が引退して「六代目」から去れば、われわれも引退して、分裂抗争は終わると言っており、裏を返せば、高山氏が「専制」の非を認めて引退しない限り、あるいは反六代目の首領が生きている限り、分裂抗争はいつまでたっても終わらないことになります。

なぜ潰さないのか?

Q13.金ピカイメージがある山口組系の組長までが困窮しているというのは本当ですか?

 バブル崩壊後の1991年に暴力団対策法がつくられ、暴力団排除条例が全国的に実施された2011年以降、彼らの存在は一般社会から切り離されていくようになりました。山口組も例外ではなく、シノギ厳冬の時代を象徴する事件が相次ぎます。

 19年に、息子が経営する尼崎市の鉄板焼き店を手伝っていた神戸山口組の幹部が、「六代目」系元組員に自動小銃で射殺されましたが、この幹部はシノギに困り、借金でもあったのか組織から脱退することも許されず、実質的に店の経営で生計を立てていたようです。

「六代目」にしても事情は同じで、近年、関西地方を荒らし回っていた高級車窃盗団が摘発を受けましたが、主犯格は「六代目」傘下組織の組長でした。その組織は名門テキヤの系譜を継ぐ名跡の傘下だったのですが、「暴排」で祭礼からテキヤ系組織が排除されたこともあり、組織ごと窃盗団に鞍替えした模様です。

 困窮に陥っているのはなにも正業の不振によるだけではなく、最近では、組員の生活に直結する電気・ガス・水道などライフラインにも規制が及ぼうとしているからでもあります。

Q14.いっそのこと警察が山口組を潰さないのは、なぜですか?

 ふりかえれば、山口組は先述した当局の「頂上作戦」の発動時に、全国のヤクザ団体が解散に追い込まれるなかで、ほぼ唯一解散を固辞したことで知られます。

 最近では、当局からテロ集団と見なされ、「壊滅作戦」の集中砲火を浴びて大打撃を受けた「工藤會」の例がありますが、それに続いて山口組が壊滅作戦のターゲットになる可能性もあるでしょう。

 ですが、「半グレ」集団と違って登録会員や指揮系統のはっきりした「目に見える集団」である結社を残したほうが、治安維持を担う警察にとってもコントロールしやすく、メリットのほうが優ると判断されるなら、そうはならないかもしれません。

 それ以前に、シノギの大半を失った組織とその構成員が「沈みゆく船」から逃げ出してしまう未来図のほうがリアルではないでしょうか。

山川光彦(やまかわみつひこ)
フリーライター。本誌(「週刊新潮」)で連載した「異端のマネジメント研究 山口組ナンバー2『高山清司』若頭の組織運営術」が話題に。『令和の山口組』(新潮新書)が初の単著

週刊新潮 2023年12月28日号掲載

特別読物「『令和の山口組』刊行 抗争はいつどう終結するのか 『政治家』『芸能界』との関係は…『日本最大の反社集団』14の疑問」より

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