組長の仕事は? なぜ抗争は終わらない? 山口組への「素朴な疑問」について徹底解説
福利厚生
Q10.山口組の2次団体である名古屋の弘道会の本部事務所にはプール付きのジムが設けられているというのは本当ですか?
業界では有名な話です。それはスポーツ万能の司組長のためであると同時に、刺青などで一般の施設を利用できない組員のためにも開放されます。福利厚生については同会のOBもこう解説しています。
「弘道会では、組織の面子を懸けたけんかで服役した組員には、懲役と同じ年数は『面倒見』する暗黙のしきたりがあります。20年の長期服役なら、その間の家族の生活の面倒は言うに及ばず、当人が出所した際に住居と組を持たせて、その労に報います。亭主が服役中の極妻たちを集めてハワイだかグアムだかへ慰安旅行に連れていったことも。福利厚生がしっかりしているから、組員も安心して懲役に行ける道理です」
Q11.弘道会が「福利厚生」を重視するのはなぜですか?
細やかな福利厚生は、もとより慈善事業でやっているわけではありません。
民間企業なら、取引相手に信頼され、会社の信用と利益を向上させた社員が評価されるでしょうが、ヤクザの世界では当該組織の暴力的威力を維持、向上させる「戦闘員」が重宝されます。
弘道会の組員が「山口組のため」ではなく「弘道会のため」に尽くすのは、前項で説明したように組員の家族まで対象となる、徹底した「報恩システム」があるがためです。
いまも抗争が終わらない理由
Q12.山口組が分裂し、いまも抗争が終わらない理由は何ですか?
15年夏、「六代目」でかつて執行部メンバーとして運営に携わっていた重鎮たちが古巣を割って出て「神戸山口組」を旗揚げします。当初、彼らからよく聞かれた本音のひとつに「去るも地獄、残るも地獄」という名言(?)がありました。彼らのいうところの「弘道会支配」という悪政に耐えるのも苦痛なら、自分たちの(子が親を捨てるのに等しい)非を承知で組を出ていくのも苦痛、と言いたかったようです。
造反の首謀者たちから聞こえてきたのは「(高山氏の政治は)斬り捨て御免だ」という義憤ともつかぬ恨みつらみでした。司組長から政治の舵取りを任された高山清司若頭の組織運営は、五代目時代までの政治とはうってかわって、「選択と集中」が基本方針となりました。警察当局に付け込まれないために、しっかりした組織だけを残して、組の会費が滞るような弱小組織は容赦なくお取り潰しの憂き目に遭うのです。これが、五代目時代までのぬるま湯につかっていた直参にとってはカルチャーショックを通り越して、高山氏が「独裁者」然と映ったのは無理もありません。
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