「自分に合ったヨーグルトの選び方は?」「納豆はマルチプレーヤー」 プロが教える腸内細菌の生かし方

ドクター新潮 ライフ

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乳酸菌とビフィズス菌の健康効果

 さて、第1走者である納豆菌が快走した後に待っているのが、第2走者である乳酸菌やビフィズス菌です。これらの菌が糖を乳酸、酢酸に変え、それが最終的に酪酸やプロピオン酸になります。このようにして、短鎖脂肪酸が作られるリレーは終了しますが、第2走者となるヨーグルトも、納豆と同様にとても重要なランナーなのです。したがって、納豆とヨーグルトを日常的に取ることで、強力なリレーチームとして機能するでしょう。

 さらに乳酸菌やビフィズス菌に関しては多くの健康効果が報告されています。そして、その効果は菌株の種類が持つ機能によって大きく変わってきます。

 例えば、内臓脂肪の蓄積を抑えるビフィドバクテリウム・ラクティス菌GCL2505株、血圧を穏やかに下げてくれるラクトバチルス・ヘルバティカス菌CM4株、免疫力を維持するラクトコッカス・ラクティス菌JCM5805株……。

 こうした菌株は、商品のパッケージに印刷されているケースが多いので、菌株を選んでヨーグルトを食べることにより、各効果の高まりが期待できます。何が何でも内臓脂肪を減らしたいのなら、商品の安さなどにとらわれず、その効果を期待できる菌株が入ったヨーグルト以外には“浮気”しないほうがいいでしょう。

腸内細菌にも多様性が重要

 一方で、人間社会と同様、菌と菌の連携があることからも分かるように、腸内細菌もダイバーシティ(多様性)が確保されることによって、「菌が果たすことができる仕事の種類」が増えます。

 従って、高血圧だから何をおいても血圧を下げたいといったような具体的な効果を求めるのではなく、「取り立てて体のどこがどうというわけではないけれど、常日頃から健康的でありたい」と意識している人は、逆に、安さ基準でスーパーの日替わり特売ヨーグルトを買うほうがいいかもしれません。結果的に体内に入ってくる菌株がランダムになり、腸内細菌のダイバーシティにつながるからです。腸の世界では、さまざまなもの(ヨーグルト)に手を出すことにもメリットがある場合があるのです。

國澤 純(くにさわじゅん)
国立開発研究法人 医療基盤・健康・栄養研究所センター長。1974年生まれ。大阪大学薬学部卒業。薬学博士。米国カリフォルニア大学バークレー校留学後、東京大学医科学研究所准教授等を経て2013年から現在の研究所に。19年よりセンター長を務める。『善玉酵素で腸内革命』『9000人を調べて分かった腸のすごい世界』の著書がある。

週刊新潮 2023年12月21日号掲載

特別読物「善玉菌を摂るだけではダメ⁉ 『腸内細菌』連携に『納豆』と『ヨーグルト』が強力チーム」より

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