「自分に合ったヨーグルトの選び方は?」「納豆はマルチプレーヤー」 プロが教える腸内細菌の生かし方
納豆は「マルチプレーヤー」
そして、腸内環境を整え、三つの戦略をより効果的に実践するために、私が「二大巨頭」として推奨しているのが納豆とヨーグルトです。いずれもスーパーやコンビニに行けば手頃な値段で手に入れられ、身近な食材である点も魅力です。
納豆は「マルチプレーヤー」の代表格といえます。原料である大豆のタンパク質はアミノ酸スコア100の良質なもので、食材が持つ栄養素自体が優れている上に、納豆には食物繊維等も含まれています。そして、糖化菌のひとつである納豆菌が含まれていることは言うまでもありません。つまり納豆は、それ自体が栄養的に優れていることに加え「いいエサ」であり「いい菌」でもあるのです。
大腸の中で糖を生み出してくれる
ここで「リレー」の話に戻ります。
先ほど、腸内細菌は食物繊維やオリゴ糖をエサに有益なポストバイオティクスを作り出していると説明しました。そのポストバイオティクスのひとつとして、腸内細胞の免疫機能を調整したり、脂肪がつきにくい働きをしたりする短鎖脂肪酸が挙げられます。
しかし、食物繊維を取れば即、短鎖脂肪酸になるわけではありません。まずは糖化菌が食物繊維を糖に変え、その糖を材料にして別の菌により乳酸などが生み出され、さらにまた別の菌によって乳酸などから短鎖脂肪酸が作り出される。このリレーのバトンがつながらなければ、せっかくいいエサを取っても短鎖脂肪酸はうまく作り出されません。
納豆菌は糖化菌のひとつであり、このリレーの第1走者を務めてくれるのです。腸内に納豆菌をはじめとする糖化菌が十分にないと、リレーが始まらないか、始まったとしてもパワー不足の“鈍足”であることから、スムーズなリレーにならないわけです。なお、口から糖を摂取しても小腸でほとんど吸収されてしまうため、リレーの主戦場である大腸にまでたどり着けません。そのため、大腸の中で糖を生み出してくれる納豆菌などの糖化菌が重要になってくるのです。
なお、納豆を食するのはほぼ日本だけであることから、必然的に納豆に関する研究は海外では進んでいません。裏を返せば、まだ研究の余地が多く残っているということでもあり、納豆の秘めたるパワーは今後さらに明らかになってくる可能性があるのではないかと考えています。
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