「自分に合ったヨーグルトの選び方は?」「納豆はマルチプレーヤー」 プロが教える腸内細菌の生かし方
GABAも腸内細菌が生み出す
私たちの体は一体何によってできているのでしょうか? 「食事」と答える人が多いかもしれませんが、実はそれだけでは不正確です。実際は、食事によって吸収した栄養素だけでなく、腸内細菌が一から作ってくれる新たな栄養素や、腸内細菌がエサをもとに生み出す有益な代謝物(ポストバイオティクス)によっても、私たちの体は作られているのです。
例えば、チョコレートなどに含まれていてストレス軽減効果があると注目されているGABA(γ〈ガンマ〉-アミノ酪酸)は、腸内細菌がポストバイオティクスとして作り出してもいます。腸内細菌が秘めている力のすごさがお分かりいただけると思います。
他にも、例えば国立長寿医療研究センターの佐治直樹氏らが2020年に報告した研究によると、「腸内細菌が代謝の過程で生み出す乳酸が多い人は、認知症リスクが低い」ことが明らかになっています。
さらには、薬が効く人と効かない人、体が冷えやすい人と冷えにくい人、ストレスを感じやすい人と感じにくい人……こういった「体質の差」「個人差」も、腸内細菌の状況によって生じるケースがあることが分かってきています。
いい菌を取り、増やし、働かせる
こうして、私たちの健康にとって、とても大事な腸内細菌の状態を良くするにはどうすればいいのでしょうか。私はシンプルに「三つの戦略」を提唱しています。いい菌を取ること、いい菌を増やす(腸内細菌が喜ぶエサを取る)こと、そして菌にいい働きをさせることです。
まずは、いい菌を取る。腸内細菌はさまざまな効果を発揮してくれるとはいえ、そもそもその細菌が腸内にいてくれなければ話は始まりません。この意味においても、有用菌であるビフィズス菌や乳酸菌、糖化菌が含まれるヨーグルトや納豆を食べることは望ましいわけです。
次に、いい菌を増やす。腸内にすむ有用菌のエサとなるものを摂取することで、菌はより一層増えていきます。いい菌が好む代表的なエサは、水溶性食物繊維と難消化性オリゴ糖です。前者は大麦や海藻類に、後者はバナナ、牛乳、タマネギ、ゴボウ、豆類などに豊富に含まれています。
そして、菌にいい働きをさせる。せっかく腸内に有用菌がいても、“相棒”のような存在がいないとその有用菌がよく働いてくれないことがあります。例えば、ビタミンB1は菌による糖代謝をサポートしてくれます。つまり、菌がよく働けるような「職場環境作り」も重要なわけで、ビタミンB1が多く含まれている豚肉や玄米などを食べることによって、腸内細菌の効果は促進されます。
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