1月スタート「大病院占拠」続編 櫻井翔で高いコア視聴率が生む“皮肉な構図”とは
櫻井の降板は不可能だった
性加害問題の当事者である旧ジャニーズ事務所の櫻井翔が主演するドラマだから違和感を抱く向きもあるだろうが、これは時間的に仕方がない。性加害問題とガバナンス欠落が深刻な社会問題と化し、スポンサーが離れたのは昨年9月。一方、1月スタートのドラマはその約1年前から準備が始まるから、出演陣の変更は不可能だった。
それでも無理に櫻井を降ろすと、今度は代役が見つからない可能性があった。また、脚本は櫻井をイメージして書き始められていただろうから、チグハグな内容になってしまう恐れもあった。
一方、中には櫻井を俳優として認めないという人もいるだろう。櫻井が異色の家庭教師に扮したフジテレビ「家族ゲーム」(2013年、主演)あたりまでは、厳しい見方は少なかったが、商社マンから高校の校長に転じる男に扮した日本テレビ「先に生まれただけの僕」(2017年、主演)あたりから、苦言が目立つようになった。このドラマの場合、校長に見えなかった。
まだ20歳だった時に演じたTBS「木更津キャッツアイ」(2002年)の好青年・バンビ役は、素が生かせたので好評だった。やはり等身大で演じられた家庭教師役も良かったが、一定の落ち着きを演技で出さなくてはならなかった校長役は苦しかった。厳しいようだが、演技面の成長がほとんどないのではないか。
俳優としての修練が不足か
櫻井にはほかにもウイークポイントがある。シリアスな場面も華やいだ場面もセリフの言いまわしと表情があまり変わらない。だから、周囲から浮いて見えてしまうことがある。
理由として考えられるのは俳優としての修練の不足。演技力を高めるには、稽古を繰り返し、幕が上がったら誤魔化しが効かない舞台をやるのが近道だが、櫻井は2006年にイギリス生まれの青春ミュージカル「ビューティフル・ゲーム」で主人公のジョン・ケリーを演じて以来、遠ざかっている。
日本テレビ「news zero」(月~木曜午後11時、金曜同11時半)のMC、TBS「櫻井・有吉 THE夜会」(木曜午後10時)などの司会があるから、時間を取られる舞台は難しいのだろう。でも、それで俳優としても一線級でありたいと言うのであるなら、無理がある。
舞台は金にはならないが、演技力に磨きをかけるためにやっている俳優が幾人もいる。例えば演技派の誉れ高い田中哲司(57)は、売れる前も今も舞台を大切にしている。
NHKを除き、ドラマの多くは稽古をほとんどやらない。全て本人任せ。だから、俳優は自分でうまくなろうとしないと、いつまでたっても演技が上達しない。
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