ノルウェー大使館が大プッシュする「サモ肉」は“第4の肉”になるか? 人気ナンバー1「寿司ネタ」に“加熱調理”という新たな選択肢

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「さも、肉屋」で1400食を無料提供

 このプロジェクトでは、ウェブサイトなどでサーモン料理のレシピを紹介しているほか、PR用のチラシやポップを全国のスーパーに配布。消費者がサーモンを加熱調理した写真をSNSに投稿すると、抽選でノルウェー旅行やサーモンのフィレ(3枚下ろし)が当たるキャンペーンを昨年12月中旬まで実施した。多くの応募があり、大使館側も手応えを感じているようだ。

 さらに同部はサモ肉プロジェクトの一環として、「いい肉の日」にちなみ昨年11月29日前後の5日間、東京・渋谷駅付近の繁華街の一角に「さも、肉屋」という名の専門店をオープン。

 店内では、サーモンのステーキ、カツ、南蛮3種をそれぞれ串刺しにしてカップに入れたワンハンドフードをたくさん用意し、5日間で計1429食を無料提供する大盤振る舞い。連日長蛇の列で、最長4時間待ちの盛況ぶりだったという。

 日本では寿司ネタとしてデビューしたサーモン。世界的にはレアでも、火を通して食べるのが主流となっている。同大使館のヨハン・クアルハイム水産参事官は「特に近年、韓国では加熱用の切り身の販売が好調。日本では肉に比べ魚の消費が少ないようだが、サーモンの調理方法を多様化することで、魚食の推進に貢献できれば」と期待を込めている。

ノルウェー首相が豊洲市場を視察

 ノルウェーのヨナス・ガール・ストーレ首相は昨年12月8日、東京・豊洲市場(江東区)を訪れ、市場関係者らの案内で魚売り場を視察した。同国産サーモンが大人気となっていることについて、卸や仲卸業者から説明を受け、「誇りに思う」と語っていたのが印象的だった。

 低調な魚消費が続く日本で、サーモンをはじめとしたノルウェー水産物の浸透は目を見張るものがある。東京電力福島第一原発の処理水放出に伴う中国の日本産水産物の全面禁輸が続く今、国産魚消費の推進へ向けた機運が高まり、「日本を食べよう!」と内需を喚起する必要性が増している。

 風評被害を軽減するには外国産ではなく、国産の魚を選んで食べることが求められるのは言うまでもない。その意味で、ノルウェーが展開する「サモ肉プロジェクト」を、忸怩たる思いでみている日本の水産関係者も少なくないのではないだろうか。

川本大吾(かわもと・だいご)
時事通信社水産部長。1967年、東京生まれ。専修大学を卒業後、91年に時事通信社に入社。長年にわたって、水産部で旧築地市場、豊洲市場の取引を取材し続けている。著書に『ルポ ザ・築地』(時事通信社)など。最新刊に『美味しいサンマはなぜ消えたのか?』(文春新書)。

デイリー新潮編集部

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