【韓国ドラマ】「愛していると言ってくれ」が28年の時を経て… 成功した日本ドラマのリメイク作品4選

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悲劇的なエンディング

「愛していると言ってくれ」と同じく、北川悦吏子の脚本による作品「空から降る一億の星」もまた、2018年に韓国でリメイクされ高い人気を得た作品だ。

 兄で刑事のジングクと2人暮らしの広告デザイナー、ジンガンは、あるパーティーでスタッフとして働く男ムヨンに出会う。施設育ちで5歳までの記憶を持たないムヨンに、直感的に危ういものを感じた兄ジングクは、やがて担当する女子大生殺人事件にムヨンが関わっていることを探り当てる。一方、妹ジンガンは女性関係の悪い噂を持つムヨンに警戒しながらも、自分と同じ場所に火傷痕を持つムヨンに興味を抱くようになっていく。

 ムヨンと兄妹の間にはもちろん過去の因縁があり、ジンガンとの恋は運命的なものだ。誰にも何も期待しない人生を生きてきたムヨンは、それをきっかけにようやくこれまでとは違う人生を思い描きはじめるのだが、過去はどこまでもムヨンを解放しない。

 オリジナルは、木村拓哉と深津絵里の主演で2002年に放送されたが、サスペンスの核心を良くも悪くも木村拓哉の独特の存在感に頼っているきらいがあった。一方の韓国版は、俳優だけに頼るのではなく、謎を少しずつ紐解いていくストーリーで、恋愛ものとしてだけでなくサスペンスとしても見ごたえのあるものになっている。

 ソ・イングク(36)が演じるムヨンが、自身の虚無感をよりフラットに演じているのも好感が高い。また異なる1展開を加えたラストは、オリジナルよりも痛切だ。韓国ドラマにおいて悲劇的な設定の作品は少なくはないのだが、そういった作品でも多くはそれなりのハッピーエンドが待っている。この作品がそうはならないのは、オリジナルが日本のドラマであるせいかもしれない。

親子の“血のつながり”

 是枝裕和監督の映画「怪物」(2023年公開)でカンヌ国際映画祭の脚本賞を受賞した坂元裕二は、数多くのドラマの脚本を手掛けており、その作品は韓国でも人気が高い。彼が2010年に書いた児童虐待をテーマにした社会派ドラマ「Mother」は、韓国で「マザー 無償の愛」(U-NEXTで配信中)としてリメイクされ大ヒットしている。

 退職を翌日に控えた小学校の臨時教員スジンは、壮絶な虐待を受けている教え子ヘナを見捨てることができず、海難事故で死んだと見せかけ彼女を連れ去る。警察の捜査が始まり追い詰められたスジンは、没交渉だった「2人の母親」を訪ねることに。一方、ヘナに「ある秘密」を知られた母親の恋人ソラクもまた、ヘナを亡き者にしようと探し始める。作品の成否は子役にかかっていたと思うが、オーディションで選ばれたホ・ユルは日本版に出演した天才子役・芦田愛菜にまさるとも劣らない名演で韓国中を号泣させた。

 ドラマが描くのは2人の逃避行だが、それによって浮き彫りになるのはスジン自身が「虐待家庭に育ち、実母に捨てられた子供」だったという事実だ。オリジナルでは、芦田愛菜を連れて逃げる松雪泰子を、かつて娘を連れて虐待夫から逃げた実母に重ねることで血縁のない松雪&芦田を「血のつながった親子と変わらない」と示してゆく。だが韓国版は、養母ヨンシンの娘への愛情の濃さを描くことで「血のつながりなど関係ない」と訴える。韓国の大女優イ・ヘヨン(61)演じるヨンシンは、何もかも型破りであるがゆえに、古い価値観の社会で多くの苦しみを舐めてきた女性だ。その価値観が韓国に根強い「血縁」に重きを置く父権主義であることは言うまでもない。

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