100回記念大会で考える「箱根駅伝」マネー事情 関東学連に入る放映権料は数十億円、広がる強化体制の格差、年俸2000万円の指導者も

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“勝ち組”は「読売」と「指導者」

 では儲けているのは誰なのか。ある大学の監督はこう言い切った。

「読売新聞と日本テレビは広告収入を考えても収益があります。関東地区の指導者(監督、コーチ)は箱根駅伝によって生活が潤っていますね」

 特別協賛のサッポロホールディングスはテレビ中継が始まった頃(当時はサッポロビール)からの筆頭スポンサーで、今回の第100回大会で38年連続。スポンサー料は1回で8億円とも10億円ともいわれている。協賛はミズノ、トヨタ自動車、セコム、敷島製パンと業界大手が並ぶ。ほかにもNTTドコモなどがスポンサーとして名を連ねている。

 これらの広告費を考えると、読売グループは巨大な利益を得ているはずだ。

 それから指導者も高所得者が少なくない。

 現在、箱根駅伝を目指して本格強化している大学は40校以上あるだろう。25年ほど前はわずかな手当でやっていたOB監督や教員監督が中心だった。近年は陸上部の指導を専任とする“プロ監督”が増えており、その報酬も上がっているからだ。

 プロ監督は年俸でいうと1000万円前後が多く、なかには2000万円ほどの指導者もいるようだ。一方、職員(教員)監督は、各大学に準じた給料となる(※監督としての報酬は基本発生しない)。

 講演やテレビ出演の多い青学大・原晋監督はテレビのバラエティ番組で自身の年収を「プロ野球監督ぐらい」とコメントしているほどだ。

大学間のマネーゲーム

 監督だけでなく、選手を取り巻く環境も大きく変わっている。

 強豪大学の場合、長距離はスポーツ推薦が毎年10~15枠ほどあり、有力高校生は争奪戦になる。その結果、近年は“マネーゲーム”がエスカレートしているのだ。

 高校トップクラスの選手になると、授業料免除は当たり前で、寮費、食事代、合宿代も大学が負担。さらに返済不要の奨学金を用意しているチームもあるのだ。なかには月に20~30万円ものお金を受け取っている選手もいる。

 一方で早大は長距離のスポーツ推薦枠が3枠ほどしかなく、基本、授業料免除などもない。同じレースに出場しているとはいえ、近年は大学の強化体制にかなりの格差が生じている。

 また近年は陸上部の“収入”も増えているようだ。箱根駅伝で上位を狙えるようなチームの場合、大手外資系企業とのユニフォームのサプライヤー契約で、年間数千万円のサポートを受け取っているケースもある。また2021年からはユニフォームにスポンサーの広告ロゴを表示できるようになった。こちらは数百万円から1000万円ほどが相場だ。他にも人気チームには各メーカーから広告絡みのオファーが舞い込んでくる。

 近年の箱根駅伝は巨額なお金が動いているが、このままでいいのだろうか。

 箱根駅伝が美しいままでいるためには“学生らしさ”を取り戻す必要があるのかもしれない。一方、箱根駅伝を通じてさらにお金を集めて、大学スポーツ界や、未来の選手たちに分配できれば箱根駅伝の“価値”はもっと上がるはずだ。

 どのような道を進んでいくのか。第100回大会の節目に箱根駅伝の今後をしっかり考えていただきたい。

酒井政人/スポーツライター

デイリー新潮編集部

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