100回記念大会で考える「箱根駅伝」マネー事情 関東学連に入る放映権料は数十億円、広がる強化体制の格差、年俸2000万円の指導者も
2024年で第100回大会を迎えた箱根駅伝。美しき学生スポーツのはずが、いつしかマネーゲームの様相を帯びてきている。知られざる箱根マネーの裏事情とは。そしてその“勝ち組"とは一体誰なのか。『箱根駅伝は誰のものか』(平凡社)の著者である“元箱根ランナー”による提言。【酒井政人/スポーツライター】
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【写真を見る】騒動を乗り越え、予選会突破を果たした立教大学の駅伝チーム。本戦にも注目が集まる。
時代とともにスポーツを取り巻く環境は変わっている。それは1920年(大正9年)に始まった箱根駅伝も無縁ではない。学生ランナーたちが仲間とともにタスキをつなぐ。その“純粋な汗”に多くの利権が絡んでいるからだ。
1987年(昭和62年)から生中継を続けている日本テレビの「新春スポーツスペシャル箱根駅伝」は30%近い視聴率を誇っている。約11時間ものドラマは驚異的な視聴率を稼ぎだすコンテンツになった。しかし、主役の学生ランナーたちは基本、無報酬だ。大会主催者の関東学生陸上競技連盟(関東学連)は出場チームに強化費として、200万円を支給しているが、そのことを知っている学生は多くないだろう。選手に直接支払われる出場料はなく、メディアからの取材謝礼なども原則、発生しない。
箱根の収益構造
その一方で“大金”を得ている者がいる。
箱根駅伝は読売新聞が共催しており、特別後援は日本テレビ、後援は報知新聞、広告代理店は読売広告社と、その親会社の博報堂DYメディアパートナーズ。主催は関東学連だが、実際は読売グループが仕切っている。
なお「箱根駅伝」は読売新聞東京本社が登録商標しているため、グッズ販売の売り上げの一部をロイヤリティーとして受け取る権利を持っている。選手がどんなに頑張ったところで、直接的な金銭面のメリットはないが、大会が注目を浴びれば、読売グループには明確なリターンがある。
では、箱根駅伝の収益はどうなっているのだろうか。
大会を主催・運営する関東学連は任意団体のため、資金や財務の情報を公表していない。そのため、集まった資金がどこにどのように配分されるのか、以前から不透明さが指摘されてきた。
筆者が関係者に取材したところ、関東学連のメイン収入となる箱根駅伝の放映権料は複数年契約で数十億円になるようだ。
とはいえ、関東学連はそれほど潤っていないという。出ていくお金も大きいからだ。箱根駅伝は217.1㎞もの距離で行われるため、走路員だけでも数千人が必要になる。加えて、スタートとゴール、各中継所はさらに警備を強化しないといけない。
関東学連の関係者によると、
「放映権料は確かに莫大ですけど、大会運営費も莫大なんです。実際には放映権料分を全部使っているような状況なんですよ。箱根駅伝グッズの収益が入ってくるので、それくらい分が黒字という感じです」
と話している。
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