“卒魚式”で涙する人も “令和のお魚王子”が作った「幼魚水族館」唯一無二の魅力

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漁港で気軽に採集・観察できる

「幼魚」を集めた展示には、こんな苦労がある。

「幼魚は、小さいものだと5ミリ程度の大きさしかなく、デリケートなので育てるのはとても難しいです。そもそもどんなエサを食べるのかといった基本的なことに関しても、教科書的な正解はありません。幼魚水族館では、エサとなるプランクトンを卵から育てて与えています。その後は、アミエビやアサリを砕いたものなどを少しずつ与えるなど、人間の離乳食と同じで成長に合わせたエサが必要です。飼育員が新たな幼魚を採集するたびに、『どんなエサを与えるか』『どの種類の魚と同じ水槽に入れてもいいのか』といったことをその都度考えて決めています」

 香里武さんが幼魚の育て方を会得したのには、小さい頃からの幼魚採集の経験があった。

「0歳の頃から両親に連れられて、漁港の岸壁で幼魚を採集していました。幼魚はそれだけ見ても何の種類の魚か分からず、成魚になるまで家で育てて初めて分かるんです。デリケートな幼魚を試行錯誤して育ててきた経験を幼魚水族館で活かしています」

 香里武さんは、今でも毎月、さまざまな漁港に通い、岸壁から幼魚や稚魚を採集している。

「幼魚にとって漁港はパラダイスのような場所です。流れがゆるやかで泳ぎ疲れない上に、大きな魚が入ってこないので敵が少なく、エサとなるプランクトンが多いという好条件がそろっているからです。さらに、海藻がちぎれて海面に浮かんだ状態の『流れ藻』や船を停め置くための係留ロープなどの人工物も、幼魚にとっては絶好の隠れ場所になります。沖にも幼魚はいますが、見つけるのはとても難しいです。漁港の岸壁の上から海面をじっくり眺めていると、肉眼でも幼魚を見つけることが出来ます」

 コツをつかめば気軽に採集できるという。

「幼魚は、風に流されて漁港の中に入ってくるので、どの方向から風が吹いているかをアプリで確認して、採集する漁港を決めます。満潮時刻が1番たくさんの幼魚が見られるので、そのタイミングを狙っていくのもおすすめです。網とバケツさえあれば、金魚すくいのような感覚で幼魚の採集や観察を楽しむことができます。たいていはいわゆる魚っぽい形はしていませんが、海面の一瞬の違和感を見逃さないようにすると、そこに幼魚がいる可能性が高いです。ただし、家に持って帰って飼育するのはとても難しいので、観察したり写真を撮ったりした後は、もともといた場所に戻してあげるようにしてください」

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