詐欺師に狙われる駐日大使館のホームページ…「外交官の知らぬ間に悪用されていることがある」【元公安警察官の証言】

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復旧に数カ月

「秘書には席を外してもらい、私が英語で通訳を行いました。刑事が『大使はホームページの改竄は知っていましたか?』と質問すると、『当初は知らなかった』と答えました。刑事が『なぜ知らなかったのか?』と聞くと、大使は『ホームページはいちいちチェックしない』と言うのです」

 すると刑事は、だんだんと詰問口調になっていった。

「刑事は『ホームページの担当者は改竄に気付かなかったのか聞いてもらえませんか』と追及するように言うので、私はそれ以上強い口調で言ってはいけないと注意しました」

 ホームページ担当の外交官に話を聞いたところ、改竄されていることに気づき、大使に報告したという。

「大使に『改竄されていることを知り、すぐに対処したのですか?』と聞くと、大使は『まず本国に報告して色々相談をしたが、すぐに何とかできるものではない。結局、修正するのに数カ月かかってしまった』と。刑事は『ホームページはあなたの国の顔でしょう。これを見て投資家が信用したのではないでしょうか』と言うと、大使は『もっともだ』と答えるだけでした」

 被害者の中には、大使館の対応に怒りを覚える人もいた。

「ホームページに載っていることが事実なのか問い合わせた人がいたそうです。そして、ホームページの担当者に話を聞くことは可能かと尋ねたところ、電話窓口になっている職員は、応じられないと無下に断ったそうです。そこで刑事が大使に『大使館のホームページについて外部から問い合わせがあったと聞いています。それにきちんと対応していれば被害者が出なかったのではないか』と言ったところ、大使は『その通りだった』と反省していました」

 その後、詐欺グループは逮捕された。捜査の結果、大使館は詐欺に関与していないことが判明した。

「実を言うと、アフリカや中東の駐日大使館のホームページが改竄されることはたまにあります。このケースと同じように、詐欺グループの仕業だと思われます。詐欺の新しい手口と言えますね。気をつけていただきたいです」

勝丸円覚
1990年代半ばに警視庁に入庁。2000年代初めに公安に配属されてから公安・外事畑を歩む。数年間外国の日本大使館にも勤務した経験を持ち数年前に退職。現在はセキュリティコンサルタントとして国内外で活躍中。「元公安警察 勝丸事務所のHP」https://katsumaru-office.tokyo/

デイリー新潮編集部

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