「新年かくし芸大会」に「平成あっぱれテレビ」…お正月の「おせち番組」はなぜ激減したのか

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「おせち番組」という言葉をご存じだろうか。激減したので知らない方もいるのではないか。三が日に放送される正月色に満ちた豪華特番のことである。どうして激減したのか? 読み解くカギの1つは放送済み連続ドラマの一挙放送である。【高堀冬彦/放送コラムニスト、ジャーナリスト】

「かくし芸大会」の衰退

 2024年の三が日も特番が並ぶ。正月色に満ちた豪華特番は減り、通常番組の拡大版が増えた。

 通常番組の拡大版は、日本テレビ「上田と女が吠える夜 笑う女には福来る!新春3時間SP」(元日午後6時)やテレビ朝日「サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん新春SP」(1月3日午後6時)、TBS「バナナマンのせっかくグルメ!!新春SP」(1月2日午後5時)、フジテレビ「有吉くんの正直さんぽ新春SP in松山」(1月2日午前9時半)など。

 おせち番組の代表だったフジテレビ「新春かくし芸大会」(1964~2010年)や日本テレビ「平成あっぱれテレビ」(1990~2001年)はとっくに消えた。そもそも民放はどうして三が日に特番を並べるのか。

「年末年始はCMの料金が高いので、制作費も普段より多い。だから特番がつくりやすい。また、正月は家にいる人が多く、総個人視聴率(PUT=その時間にテレビを観ている人の総数)が高いので、特番を組んだほうが高視聴率を狙える」(日テレ元編成幹部)

 年末年始は民放の稼ぎ時なのだ。普段に増して視聴率を競う。「年間視聴率3冠王」「月間視聴率3冠王」「週間視聴率3冠王」とは別に、「年末年始視聴率3冠王」という括りも存在する。これを民放各局が争う。

 最近は「視聴率がテレビ界の絶対値である時代は終わった」と説く向きもあるようだが、当のテレビ界、広告界からすると、荒唐無稽な話。CMの値段は昔も今も視聴率で決まるのだから。TVerなど無料配信サービス内で流れる広告映像(インストリーム広告)もあるが、売上高はCMの約30~50分の1に過ぎない。

「かくし芸」生みの親はドラクエ作曲家

 三が日にかつて君臨した「かくし芸大会」は1980年、元日の午後7時から3時間の放送で48.6%の世帯視聴率を記録した。世帯総数や家族構成が大きく変わったので、過去と現在の世帯視聴率の単純比較は乱暴だが、突出した数字なのは間違いない。

 この番組を企画し、当初は演出も手掛けたのは元フジ社員の故・すぎやまこういち氏だった。

 すぎやま氏はRPGゲーム「ドラゴンクエスト」シリーズの音楽をつくる一方、ザ・タイガースの「花の首飾り」(1968年)やガロの「学生街の喫茶店」(1972年)など数々のヒット曲もつくった傑人。テレビマンとしても天才だった。

「歌手や俳優、コメディアンが、普段は見せない別ジャンルの芸を見せる番組」。今の若い視聴者にとっては平凡な企画かも知れないが、昭和期としては画期的な発想だった。

 いしだあゆみ(75)と小柳ルミ子(71)らが一緒に邦楽を奏でたり(1976年)、キャンディーズの3人が玉乗りをやったり(同年)、沢田研二(75)がコミカルなショートドラマに挑んだり(1980年)。おせち番組らしかった。

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