日本製が初めて使用される台北「ニューイヤー花火」 現地の期待は高まる一方で、思わぬプレッシャーも
昨年は“最も醜い花火”
今回の花火が注目されるわけは、スペインから輸入した花火を使った前回のニューイヤー花火の影響も大きい。悪天候に見舞われたということもあったが、なにより演出のちぐはぐさが目だったという。LEDや音楽などの先端技術を加えて盛りあげようとしたが、演出に無理もあった。評価は人それぞれだが、ニュースサイト聯合新聞網には、「最醜跨年煙火」という見出しが躍った。「最も醜いニューイヤー花火」といったところか。
だから今回は日本製で汚名返上……? そんなストーリーを抱く台湾人や内外メディアは多いようだが、内実は違うようだ。関係者に訊くと、日本製花火を使う案は、前回のニューイヤー花火の前の時点ですでに提案されていたという。
「台北101のコンセプトは、毎年、新しいニューイヤー花火に挑戦するというもの。そのなかで日本の花火を使う案が提案され落札されたんです。日本の花火は台湾の花火の3倍の価格ですが、これでもなんとか……という目算が立ったのでしょう。実際には日本製花火と台湾製花火をうまく混ぜ合わせながら使うようです」
しかしそのあたりを知らされないネットユーザーたちは、前回の花火を、「サイレントショーだった」、「台北の歴史に残る恥ずかしい花火。私は怒っている」と叱責。日本製になることに期待を寄せる。
総統選の弾みに…
日本の花火業者には思わぬプレッシャーがかかるわけだが、ただでさえ、台北101のビルから点火するという特殊な状況を考慮しなくてはならない。日本の伝統的な球状打ち上げ花火とは違い、花火は棒状の特注品になる。高所での作業を専門にする職人がビルのベランダに花火を設置し、コンピュータ操作で点火していく。台北は湿度が高く、この時期は雨も多い。筒状の本体をラミネートし、発射口を密閉するといった防水加工も必要だった。そして日本からの搬送にはいくつかの許認可をクリアする必要があった。日本の港を出た特注花火は、12月9日に高雄港に到着。調整やテスト、設置などを考えるとぎりぎりのタイミングだったという。
しかもいまの台湾は総統選の熱気が渦巻いている。記者会見に出席した行政院副院長の鄭文燦氏は日台友好をアピール。民進党内でも「これで総統選の弾みがつく」という空気だ。対する国民党は、当日、国民党の蒋萬安台北市長がイベントに登場し、「台北市のサポートあっての年末イベントだ」と強調するといわれる。
台北101ビルの近くにあるレストランのマネージャーYさん(36)は、「今年は31日の夜の予約も多く、盛り上がりを感じます。スタッフも勤務後は花火を見に行きたいという若い子が多いです」という。「日本と台湾の花火を混ぜて使うというから区別がつかないんじゃないですか」(大学生Zさん。21)という意見もあるが。
会社員のLさん(41)はこうもいう。「花火は天候に左右される。天気は与党を味方するか、野党を助けるか。今回は総統選占いニューイヤー花火ですよ」
台北101のニューイヤー花火は、日本時間の2024年1月1日1時からユーチューブなどで見ることができる。