「大人はもっとなめられた方がいい」…スピードワゴン小沢一敬が語る、伝説の月9ドラマ「ビーチボーイズ」の美学

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「これって俺らのことじゃんと思った」

 2024年1月6日(午後8時~9時50分/FODでは2023年12月15日から配信)、BSフジにて『ビーチボーイズに憧れて』なるドラマが放送される。同作は、反町隆史、竹野内豊がW主演を務めた月9ドラマ『ビーチボーイズ』(97年)のオマージュドラマだという。

 主演を務めるのは、お笑い芸人の小沢一敬(スピードワゴン)と徳井義実(チュートリアル)の二人だ。実際に『ビーチボーイズ』に憧れを抱いている二人が、反町&竹野内のW主演よろしく、海が見えるカフェを舞台に熱演する。

 小沢一敬(50)に、同ドラマのテーマでもある「やらない後悔とやる後悔」について、話を聞いた。【我妻弘崇/フリーライター】

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 知多半島(愛知県)の海沿いの町で生まれ育ったという小沢さんは、「『ビーチボーイズ』の放送が始まったとき、これって俺らのことじゃんと思った」と笑う。

「15歳のとき、一つ上の先輩と一緒に、海が見える老舗ホテルで働いていたことがあったんですよね。男同士二人で、ホテルの寮に住み込み。海のそばで男が二人で生きていく――、そういう世界に親しみがあったんですよ」(小沢さん、以下同)

『ビーチボーイズ』にハマったのは必然。そう中空を見つめながら振り返る。

「『ビーチボーイズ』を見ると、10代の青春時代を思い出すんですけど、よく考えると、もうお笑いを始めていたから23歳くらいなんですよね。20歳を過ぎているのに、10代の感覚にさせてくれるというか」

 1998年、小沢さんは井戸田潤とスピードワゴンを結成する。『ビーチボーイズ』の放送は97年。スピードワゴン結成前夜に出会った、男同士の友情とひと夏の人間模様を描いたドラマは、いまなお鮮烈な印象とともに、記憶の中にあり続けると話す。

「今みたいにお笑いだけで食べていける状態じゃなかったから、何者でもない自分を思い出す。今も“途中”のさなかにいるけど、もっと若い“途中の時代”を思い出させてくれる」

「勝手にアラフィフって決めつけてほしくない(笑)」

『ビーチボーイズ』は、反町演じる桜井広海と竹野内演じる鈴木海都、二人の20代の若者が、社会という外洋に戸惑いながら、自分たちの海を見出すまでを描いた。

 対して、『ビーチボーイズに憧れて』では、カフェを経営するアラフィフの二人(小沢・徳井)が、見つけたはずの海に対して、歳を重ねた人間だからこその葛藤を演じる。

「やはりアラフィフになると、小沢さんご自身、考え方が変わるものですか?」。そう尋ねると、「アラフィフって呼ばれ方があんまり好きじゃない」といたずらっぽく反論する。

「僕は、自分のことをアラフィフと思っていない。僕の中のアラフィフのイメージって、『ダウンタウンDX』に出ていたときの中尾彬さんや江守徹さん。自分がそんなに貫禄があると思っていないし、周りが勝手にアラフィフと呼んでいるだけ。50歳だからって、勝手にアラフィフって決めつけてほしくない(笑)。そもそも僕は、誕生日を迎えても、14歳から数えるのをやめているから。ぜんぜん数字とか気にならない」

 50歳らしく生きようとは思わない。「いまだに主食がマックとCoCo壱だもん」。小沢さんは、年齢を笑い飛ばす。

「“おじさんだな”と思い始めたら、自分からおじさんっぽい行動を取り出すんだよね。だから、気にしない方がいい」

 だとしても、周りはおじさんだと指を差す。ジェネレーションギャップだって生じる。齟齬を感じれば、いやおうなしに自らの加齢を感じてしまうだろう。ところが小沢さんは、「なめられるのはいいこと」だと言い切る。冗談とも本気とも付かない、あのしゃがれた声色で助言する。

「ありがたいことに、僕は若手(芸人)がガンガンいじってくれるから、気楽にやれている。いじられる方がいいなって思うんですよ。大人になればなるほど、なめられた方がいい。みんな、なめられるって悪いように受け取るけど、キレイなものしかなめれないじゃん。汚いものはなめられない」

 思わず、「なるほど」とうなると、「決まったね!」と笑みを浮かべる。たしかに、目の前にいる小沢さんから、アラフィフ感は感じない。

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