琴光喜は野球賭博問題で解雇も“強さ”は本物だった…遅すぎた大関昇進が象徴する波乱の土俵人生

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野球賭博関与問題で解雇処分に

 平成22年、初場所が終わると、大相撲界は大きなうねりに巻き込まれる。初場所で25回目の優勝を遂げた朝青龍が、暴行事件などの責任を取って、突如引退。そして、夏場所後、現役力士や親方による野球賭博関与問題が、週刊誌で報じられた。

 それを受けて、琴光喜は翌名古屋場所の出場辞退と謹慎を申し出、相撲協会はそれを受.理。また、賭博を申告した65名を厳重注意するなどしたのだが、日を追うごとに事態は収拾がつかない方向へ転がっていく。そして名古屋場所前の7月4日、琴光喜に対して、解雇という重い処分が下された。

 多くの謹慎者を出して迎えた名古屋場所、NHKの大相撲中継は中止、優勝賜杯なしの表彰式など、異例と混乱の場所となった。その後、琴光喜は、「解雇は平等性を欠くのではないか?」とし、髷を結うための長い髪をそのままに、4年間にわたって訴え続けた。

 相撲への未練を断ち切ったのは、平成27年2月のこと。現役時代、同じ土俵で戦った力士仲間が集っての断髪式がおこなわれた。

 止め鋏を入れたのは、少年時代から憧れ続け、解雇処分に反旗を翻してくれた貴乃花親方だ。

 現在(2023年12月)は、名古屋市内で焼肉屋を経営。2人の息子は少年相撲に励み、「第2の琴光喜」を目指している。

武田葉月
ノンフィクションライター。山形県山形市出身、清泉女子大学文学部卒業。出版社勤務を経て、現職へ。大相撲、アマチュア相撲、世界相撲など、おもに相撲の世界を中心に取材、執筆中。著書に、『横綱』『ドルジ 横綱朝青龍の素顔』(以上、講談社)、『インタビュー ザ・大関』『寺尾常史』『大相撲 想い出の名力士』(以上、双葉社)などがある。

デイリー新潮編集部

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