辛口コラムニストが選ぶ2023年「ドラマワースト3」 「らんまん」「どうする家康」でEテレのお勉強番組が頭に浮かんだワケ

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 辛口コラムニスト・林操氏による今年のドラマ・ベスト&ワーストの後編。前編ではベスト3&ワースト1が発表された。果たしてワースト2からのカウント“アップ”はどうなるか。さらにテレビ界の総括も――。【前後編の後編】

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アナ:では、2023年の民放連ドラ番付、ワースト3の第3位、第2位の発表に移りましょう! ワーストは第1位からの発表となったので、続いて第2位からカウントアップ形式でお願いしましょうか。

林:では、2023年ワースト連ドラ、第2位は――

●だが、情熱はある【日テレ系/日曜夜10時30分/4月期】

――です。

アナ:お、地味なんだか派手なんだか、ちょっとわからない選択ですね。オードリーの若林正恭さんと南海キャンディーズの山里亮太さんの交流と成長をKing & Princeの高橋海人さんとSixTONESの森本慎太郎さんが演じた作品で、それなりに話題になりましたが、視聴率はそれほどでもなかった記憶があります。

林:アナタ、見なかったね、あのドラマ。

アナ:バレましたか、すみません。初回を録画で見て、これは業界の内部にいる身としては見続けられないなと諦めました。

林:まだ正直さが足りないな。「同じギョーカイ人の端くれとして、恥ずかしくて見るに耐えない番組だなと見切りました」と言えばいいのに。

アナ:いや、そんな……。

林:大丈夫だって。主演の2人の所属してたジャニーズはあんなことになってるんだから。

アナ:いや、でもまだ……。

林:そうかそうか、モデルになったオードリー若林と南キャン山里のバックにいるケイダッシュだ吉本だは健在か。……というわけで、ここまでのワタシとアナタの会話のなかに「だが、情熱はある」ってドラマの困ったところが詰まってたよね。デカくてうるさい事務所の影がチラついて、というより、いちいち眼に刺さってきて、とても見ていられないもんね。

アナ:いや、私はそこまでは……。でも、まぁ、そういう面もありました。

林:日テレ、公共の電波を使って、何、ギョーカイ内接待やってんだよ、と。むかしフジテレビがつくった、ナベプロ(渡辺プロダクション)創業者を主人公にした内輪褒め接待ドラマ(「ザ・ヒットパレード~芸能界を変えた男・渡辺晋物語~」2006年)とか思い出させんなよ、と。

アナ:……もう、この作品の話はこれくらいにして、次にいきましょう。

林:「だが、情熱はある」、演出とかには光るものもあったから、もったいないと言やもったいないんだけどね。あの枠組み、あのテーマなら、せめて役者はジャニーズその他いろいろの大手ではない事務所から選んでくれれば、ギョーカイ臭は大幅減で、もう少し見やすくなったんだろうけどなぁ。

アナ:だ・か・ら、次いきますよ、次!

大河だって朝ドラだって

林:連ドラ2023年ワースト3、第3位は――

●らんまん【NHK/月~金朝8時/4~9月】
●どうする家康【NHK/日曜夜8時/1~12月】

――です。

アナ:あ、去年はベスト1に選ばれたNHKの大河と朝ドラが、今年はワースト3の第3位ですか。評価が一転しましたね。

林:「らんまん」と「~家康」、どちらにも言いたいことはあれこれあるし、付け加えるなら「らんまん」の後番組「ブギウギ」も同じワースト3位に入れたいくらいなんだけれど、これは未完だから抑えておくとして、それにしても飽きた。もう本当に飽き飽きした、ああいうのに。

アナ:ああいうの、と言いますと?

林:「らんまん」見てても、「~家康」見てても、あるいは「ブギウギ」見てても、頭に浮かんでくるのはEテレのお勉強番組。よぉく調べて、ちょっと見せ方をヒネって、ほぉら面白いでしょ、ためになるでしょ、感動するでしょ、と。

アナ:ううん、確かにそのとおりですが、大河ドラマや朝の連続ドラマというのは昔からそういうものではなかったかと。

林:うんうん、だからこそ飽きちゃったという面もあるんです。大河だって朝ドラだって、昔は爺さん・婆さん・おっさん・おばさんが身体のリズムに則って見る生活習慣番組だったからね。いや、今もそうなんだけれど、昔と違うのはNHKによる視聴者への媚びへつらい度がどんどん上昇し続けていて、さらにはお説教度も高まってきていること。

アナ:若年層も含め幅広い層に見てもらおうと努力を続けているとは言えますね。

林:だからEテレっぽくなるんだよね。牧野富太郎だ、徳川家康だ、笠置シヅ子だの話、若い連中にまで見てもらおうとするから、どんどん学習番組になっていく。それならストレートな教養ドキュメンタリーに仕立てりゃいいのに、枠はドラマ、それも尺(放送時間)が長いから、要らぬ工夫を次から次へと積み重ね、その結果、口当たりはいいのに噛んでみると妙な味がする創作料理になっちゃってる。

アナ:なんとなくわかってきました。そういう不思議な違和感、確かにあります。

林:最近の子供たちは学校で「調べ学習」とやらをやらされるようで、地元の歴史とかを本やネットで調べて、それをタブレット使ってプロジェクターでプレゼンするまでが授業。

アナ:息子の小学校で発表会があって見に行ったことがあります。

林:あれ、発表が凄いでしょ。全国区では無名な版画家の作品をアニメ化したり、名前くらいしか聞いたことのない俳人の句を集めてラップにしたり、それを子供が生真面目につくった “作品”が披露されるんだけれど、そういうのを見ているのと同じおかしさとつらさが、「らんまん」や「~家康」や「ブギウギ」にはある。

アナ:よくよくわかります!

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