辛口コラムニストが選ぶ2023年「ドラマベスト3」 2位「VIVANT」、1位はジャニーズ問題が見事に投影されたスペシャル作品

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ベスト2にあの大作

アナ:続いて民放連ドラ2023年ベスト3の第2位は?

林:ベストの第2位に選んだのは、コレです――

●VIVANT【TBS系/日曜夜9時/7月期】

アナ:おお、今年ダントツの話題作で、視聴率でもトップに立った作品がランク入りしました。自称ひねくれ者の林さんのことだから、番付から外したりワーストの第1位に選んだりされるのではないかと予想していたので、年間ベストの第2位という高評価はちょっと意外です。

林:確かに、あれをどう評価するかによって、TVを評価する側もまた評価されるというタイプのドラマだよね、「VIVANT」。でもワタシの場合、特に悩んだということはなくて、「作品としてはトップにはほど遠いからベスト1はなし、一方、商品としてはトップだからランキング落ちもなし」という単純な判断で、ベスト2に置いたのよ。

アナ:作品としてトップにはほど遠いと見る理由を教えてください。

林:脚本はアレコレ伏線を張ってドタバタ回収するのに忙しいばかりだし、豪華な配役や海外ロケはカネかけてる感を視聴者に認知させることがメインの目的にしか思えないしという、大作にありがちな「大味な大作」に終わったというのがひとつ。

アナ:まだ放送が続いている段階で林さんにお願いした「VIVANT」評でも、そういう大作になってしまうのではと危惧されていましたが、予感が当たってしまいましたか。

林:あれだけ広げてみせた屏風を、最後までなんとか倒れないように立て続け、数字(視聴率)も話題も大いに伸ばしたことは見事でした。力もあれば技もあった。ワタシ自身、珍しく録画ではなくリアルタイムで見続けてたからね。でも、そのうちに気づいちゃったのよ、「あ、この見逃せない感って、ドラマっていうより『アメリカ横断ウルトラクイズ』を見てたときと同じだわ」って。

アナ:「アメリカ横断ウルトラクイズ」! 私も子供のころ夢中になって見ていましたが……なるほど、次の舞台はどこなのかとか、そこに進めるのは誰なのかとか、どんな趣向のクイズが出されるのかとか、わくわくしていましたね。

林:「VIVANT」の提供するスリルとサスペンスも同類なんだよね。よくできたドラマっていうより、よくできたバラエティの面白さ。逆に言えば、「アメリカ横断ウルトラクイズ」の面白さが、よくできたドラマの面白さでもあったということなんだけれど。

アナ:とてもよくわかります。

林:いずれにせよ、「ああコレ、『アメリカ横断ウルトラクイズ』だわ」と気づいて、さらに「でもコッチはガチ脚本ありのフィクションだもんな」と思い出した時点で、つまり放送中の8月くらいにはもう、今年のベスト1の可能性は消えたね。アレをもし連ドラの年間トップに選ぶのなら、同率1位で過去の「アメリカ横断ウルトラクイズ」も選ばなきゃいけなくなる。「VIVANT」っていうのはそういうドラマ、というよりTV番組。

ベスト1に意外なドラマ

アナ:さて、いよいよ民放連ドラ2023年ベスト3、第1位の発表を!

林:はい。今回のベスト1も悩みました。珍しく候補を挙げてみるかね。

●ブラッシュアップライフ【日テレ系/日曜夜10時30分/1月期】
●unknown【テレ朝系/火曜夜9時/4月期】
●こたつがない家【日テレ系/水曜夜10時/10月期】
●セクシー田中さん【日テレ系/日曜夜10時30分/10月期】

アナ:おお、どれも林さん好みっぽい作品ですね。医療モノは選ばれていないし、捜査モノも「unknown」くらい。

林:今年はそもそも医療ドラマが目立たなかったしね。

アナ:「ブラッシュアップ~」の安藤サクラさん、「unknown」の高畑充希さん、「こたつ~」の小池栄子さん、「セクシー~」の木南晴夏さんと、主演が30~40代の女優さんという作品が多いのも、いかにも林さんです。

林:若くて綺麗なお姉ちゃんが見たいのなら、ドラマ以外でいくらでも見られるでしょ。若くなくてもかわいいお姉さんのほうがずっと稀少だし、ずっとドラマ向き。

アナ:もうひとつ、脚本家のオリジナル作品が多く選ばれていますね。「ブラッシュアップ~」のバカリズムさん、「unknown」の徳尾浩司さん、「こたつ~」の金子茂樹さんと。さて、この4本の中から林さん、どれを年間トップに選ばれたんですか? あるいは4本まとめてベスト1とか?

林:ドゥルルルルルルルルルルル~ッ!

アナ:お、ドラムロール来たーッ!

林:民放連ドラ2023年ベスト3の第1位は――

●スペシャルドラマ 必殺仕事人【テレ朝・朝日系/12月29日・単発】

――です。

アナ:えええっ。ええっ、「必殺仕事人」って、あの年末放送の「必殺」スペシャル?

林:それそれ。ただし、「必殺」にはいろいろなラインがあるから、今回のは正確には「仕事人」スペシャルで、そう呼ばないとマニアに怒られるけどね。

アナ:失礼しました。その「仕事人」スペシャル、連ドラではありませんが民放ではあるし、プライム帯でもあるので、平気でNHKの朝ドラをベスト1に挙げてきたような従来の林さんのセレクションからすれば、むしろ穏当にさえ感じられますが……しかし、先ほどのトップ候補の4本は何だったんでしょう?

林:まとめて4位入賞、ということにしてください。

アナ:それはともかく、今回トップの「仕事人」スペシャル、林さん、まだご覧になってないでしょ? 見てもいないのに、ベスト1ですか?

林:見なきゃわからないようなドラマを、わざわざ年間のベスト1に推す馬鹿はいないでしょ。見なくてもわかるほどのドラマだから、年間のベスト1なんです。

アナ:なんですか、その屁理屈。

林:今度の「仕事人」スペシャル、アレがどんだけスペシャルか、アナタわかってないの?

アナ:東山紀之さん主演では最後になるという「必殺」シリーズの最新作ですよね……ああ、そうか! そこがポイントか、東山さん!

林:正解。実は今年、ベスト1にはドラマじゃなく、また現実を選ぼうかなと考えてたのよ、「第1位は……ジャニーズ事務所崩壊!」って。あれ自体がエラいドラマだし、ドラマのギョーカイに及ぼす影響も極大だし。でも、ちょっと考えてみたら、そういう現実の大事件を見事に象徴してるドラマがあるじゃないか!と気づいて、ワタシゃ風呂から飛び出して、裸で街を駆け回ったね。

アナ:アルキメデスですか。やめてください、真冬に。で、何に気づいたんですか?

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