辛口コラムニストが選ぶ2023年「ドラマベスト3」 2位「VIVANT」、1位はジャニーズ問題が見事に投影されたスペシャル作品

エンタメ 芸能

  • ブックマーク

 辛口コラムニスト・林操氏による恒例企画、今年のドラマ・ベスト&ワースト。今回はそればかりでなく、話はあらぬ方向へ――。【前後編の前編】

 ***

アナ:毎年恒例、民放連続ドラマのこの1年を振り返るベスト&ワーストの発表、今回は2023年版をお送りします。ベスト&ワーストの選出と講評は、毎度おなじみ、非国民生活センター・TV主席研究員の林操さんです。よろしくお願いします。

林:♪安倍派ベハ! 安倍派ベハ! 安倍派は裏金派!

アナ:なんですか、いきなり「南の島のカメハメハ大王」の替え歌なんか唄い出して。しかも、キメのポーズが背筋を伸ばして手のひらを合わせ、両腕を上に伸ばしたエッフェル塔……。

林:すみません、2023年を振り返れと言われ、つい安易な時事ギャグに走ってしまいました。風刺派によるテロ攻撃。

アナ:……ひょっとして林さん、今年も乗り気じゃないんですか、連ドラの話?

林:図星! 2023年も相変わらず、ベストは見つけるのが至難の業だし、ワーストは絞り込むのが至難の業という、ドラマ大凶作の年だったからね。

アナ:2022年もベスト1が大河や朝ドラなどNHKのドラマ3本で、林さん自ら「民放でもなければ、プライム帯(夜7~11時枠)でもなく、ましてや連ドラですらない」という神聖ローマ帝国状態を嘆く苦しさでした。

林:民放のプライム帯の連ドラの出来が、ますます落ちてきたからねぇ。

アナ:そして22年はワースト1もドラマではなく、ロシアによるウクライナ侵攻や安倍晋三元首相暗殺など現実の大ニュースでした。事実はドラマより奇なりということで。

林:去年も言ったけど、ニュースや情報番組のほうがリアルで面白くて怖いときに、嘘臭くて安っぽくてつまらないドラマなんか見てられるかよ、という話。

アナ:……となると、2023年もまたイレギュラーなランキングになりそうですね。さっそく発表といきましょう。

ベスト作品の共通点とは

林:民放連ドラ2023年ベスト3の第3位は――

●スタンドUPスタート【フジ系/水曜夜10時/1月期】
●ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と【TBS系/金曜夜10時/4月期】
●ばらかもん【フジ系/水曜夜10時/7月期】
●真夏のシンデレラ【フジ系/月曜夜9時/7月期】
●こっち向いてよ向井くん【日テレ系/水曜夜10時/7月期】
●転職の魔王様【フジ系/月曜夜10時/7月期】

――です!

アナ:おお、6本というのは多めであるものの、本当に普通に民放プライム帯の連ドラが選ばれました……が、あれ、林さん、ベストの第3位で合ってます?

林:ああ、やっぱり思ったでしょ、ワーストの第3位の間違いじゃないかって。だって、数字も悪けりゃ中身も酷い、記録にも記憶にも残らない、商品とも作品とも呼べないドラマばっかりだもんね。

アナ:そこまで言わなくてもいいかと思いますが、しかし、どれも年間ベストの上位に入ってくる作品ではないように感じられます。それをなぜ、まとめてベストの第3位に?

林:鍵は主演のキャスティング。「スタンドUP~」が竜星涼、「ペンディング~」が山田裕貴、「ばからもん」が杉野遥亮、「真夏の~」が間宮祥太朗、「~向井くん」が赤楚衛二、「転職~」が成田凌で、さて、彼らメイン男優の共通点は何でしょう?

アナ:共通点……さて……振り仮名がないと名前が読みにくいとか、東映の戦隊&ライダーシリーズの主演経験があるとか……。でも、どちらも全員には当てはまらないし……。

林:どれもなかなかいいポイントですが、正解は5人そろって若いイケメン主演男優なのに旧ジャニーズ事務所の所属じゃないこと。

アナ:あ、そうか、確かにそうですね。

林:共通点はもうひとつあって、彼らにとってはプライム帯の連ドラ主演が初めてか、あるいは2回目程度だったこと。主演男優がジャニタレでもなければ座長経験が豊富な安定株でもないということはつまり、6本とも民放としてはキャスティングで冒険をしてみた連ドラということになります。

アナ:なるほど。その冒険というのが、各作品がベストの第3位に選ばれた理由ですか。

林:そう。逆に言うと、それ以外にプラス評価できる理由を探すのに、1本あたり2年ずつくらいかかりそうなドラマばっかりなんだけれど、連ドラをつくる側の意識と行動がようやく変わってきたのかな、という点に薄い希望の光を見出して、敢えてワーストではなくベストの側に入れました。

次ページ:ベスト2にあの大作

前へ 1 2 3 次へ

[1/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。