「今の信号行けただろ!」「サングラスはお客に失礼だ」理不尽なクレーム、独特の勤務形態…バス運転手が明かす“過酷すぎる日常”

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遅延に対するカスハラ

 タクシーのように近道を、鉄道のようにレール上を走れないバスは、常に交通状況との戦いを強いられる。特に生活道路にある停留所を順番通り通過しなくてはならない「街バス」の場合、渋滞による遅延はつきものだ。

 そんな状況は乗客も分かっているはずなのに、日本に蔓延る「時間厳守」の文化のせいか、この遅延に関するクレームやカスハラは後を絶たない。現役ドライバーが言う。

「時刻表通りにバスが来ないことに対するクレームは非常に多い。先日も『寒空のもと10分も待たされ大事な会議に遅刻した』という電話が鳴ったばかりです」

 停留所の時刻表を見ると、よく「“予定”時刻表」という表記を見る。道路環境に左右されやすいバスの時刻表は、あくまでも「目安」だからだ。遅延することは往々にしてある。

 しかしその一方、バスは「旅客自動車運送事業運輸規則」の定めで、その予定時刻表よりも早く停留所を出発する「早発」が禁じられている。

 そのため、渋滞する走行区間に備え、比較的交通量の少ない区間であらかじめ時間稼ぎをしておく、ということもできない。つまり、早めに到着した停留所では、その先で予想される渋滞にやきもきしながらも、各停留所で出発時刻になるのを待たなければならないのだ。

 しかし、そんな事情を知らない客からは、停留所で時間待ちをしていると「急いでいるんだからさっさと出発しろ」という罵声が飛ぶこともあるという。

客が遅延の原因になることも

 バスを遅延させるのは、何も「渋滞」だけに限らない。ほかでもない、乗客自身が遅延を発生させることもある。

「交通系ICカードを利用しようとするお客様の『残高不足』も困ります。タッチして残高不足が判明。そこでもたつく。これがまたなぜか、駆け込みのお客様に多いんですが…そこからスマホでチャージを始めるので1分近くは足止めを喰らいます。バスの車内ポスターにあった『どこでもチャージできるじゃない』ってのが、皮肉に見えました」

 特に空港バスや高速バスの乗客は、飛行機の出発時間が決まっていたり、長旅になったりするせいか、気が立っていることが少なくないという。

「安全運転のために黄色で停車したら『今の信号行 けただろ』と罵声を浴びせられた」

「『渋滞やダイヤの乱れが発生する恐れがある』と何度も事前にアナウンスしていても、遅延すると『もう飛行機に間に合わないから遅延証明書を書け』と求めてくる人もいます」

 こうした客が現れると、その対応のせいでさらに時間が延びるという悪循環も発生する。

 バスドライバーは基本的にワンマン運転だ。クレーム客の対応をドライバー自身がすることで、今度は別のターミナルに向かおうとしている他の乗客が遅れることになるのである。

「年末年始などの大型連休は、普段バスに乗り慣れていないお客様が乗り合うのでトラブルになりやすい。あらかじめICカードにはしっかりチャージしておく、予定より数本早いバスに乗るなど、客側でも努力をしてほしいです」

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