「君たちはどう生きるか」「ゴジラ-1.0」が全米を席巻 日本のサブカルで「アニメ」が“世界のメインストリーム”に躍り出た納得の理由
年々、グローバルにファンを獲得している「アニメ」を筆頭とした日本のコンテンツだが、今年はひときわ「飛躍の年」になったという。その背景にある、世界規模で起き始めた“カルチャーの地殻変動”をリポートする。【数土直志/ジャーナリスト】
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2023年の終わりがそろそろ近づくなか、アメリカで映画業界を驚かせるニュースが駆けめぐった。12月・第2週(8~10日)の週末映画興行収入ランキングで、1位に宮崎駿監督の「君たちはどう生きるか」、3位に山崎貴監督の「ゴジラ-1.0」がランクインしたのだ。
日本映画どころか、外国映画が上位に食い込むのも難しい米国の映画マーケットで、「トップ3」のうち日本映画が2つを占める“ニッポン旋風”に業界が色めき立った。
「君たちはどう生きるか」は、宮崎駿が80歳を超えて監督した話題作だ。現地でも「10年ぶりの新作」として当初から大きな話題となり、その扱いはもはや熱狂に近かった。同映画は12月25日までにニューヨークやロサンゼルス、シカゴ、ボストンなどの各映画批評家協会による最優秀アニメーション映画賞を総なめし、ゴールデングローブ賞に「すずめの戸締まり」とともにノミネート。年明けに発表される米アカデミー賞でもノミネートはもちろん、最優秀アニメーション映画賞受賞の期待がかかる最右翼となっている。
「世界の巨匠」としての宮崎駿の高い知名度と人気が背景にあるのは間違いないが、日本アニメに対する高い評価も躍進の理由となっている点は見逃せない。
「まるで魔法!」と大絶賛
その一つがCG制作やデジタル化が進むなかで、「手描きアニメ」を続けていることへの評価である。その技術と映像表現の素晴らしさを体現したスタジオジブリは、いまや他の追随を許さない存在だ。もう一つは日本のアニメ映画にしばしば見られる“明確な敵”をつくらず、善悪を示さないストーリーや構成の妙が挙げられる。それにより深いテーマ性を内包し、さまざまな解釈の余地を残す点も、世界が日本のアニメに惹かれる理由だろう。
話題となっている「ゴジラ-1.0」も作品への高い評価が興行収入へと繋がっている。本作では戦後に日本に現れたゴジラとともに、それに対峙する人々の人間ドラマを掘り下げ、観客の心を掴んだ。米国の映画批評サイト「ロッテントマト」では、批評家スコアと観客スコアの両方で「98%肯定的」と驚異的な数字を叩き出した。
〈まるで魔法のよう。目を見開かされ、すべての点でエンターテイメントのセンスに溢れている〉(ワシントン・ポスト紙)
〈最後まで圧倒される唯一のゴジラ映画〉(ハリウッドレポーター)
といった具合に、映画公開前から各メディアは大絶賛だった。結果、映画館数2308館での公開を実現し、週末ランキングで3位に浮上。当初は1週間限定とされていた上映期間も延長され、アメリカで公開された日本の実写映画の興行記録を34年ぶりに塗り替える快挙を成し遂げた。
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