川井友香子 パリ五輪への道が絶たれ“至学館大がゼロ” 「いつが最後になるか分からない」姉・金城梨紗子との強い絆も

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栄和人監督の見解

 この日、金城の決勝でかつての愛弟子の対戦相手側のセコンドに入っていた栄和人氏に後日話をうかがった。今も至学館大学レスリング部の監督として若手を育てている。

「今回の59キロ級のレベルは、それほど高いとは言えない。それでも(金城)梨紗子はさすがでした。子供を育てながら今もあそこまでやっていることは褒めてやりたいですよ」

 そして栄氏は続けた。

「今回、57キロ級で優勝した南條早映(24=東新住建)にしても、至学館に彼女が入学した頃にちょうど俺が例の騒動になって道場に来られなくなってしまい、しっかりと見てやれなかった。7月のプレーオフで櫻井つぐみに負けてパリ切符を逃してしまった梨紗子には申し訳ない気持ち。でも、気を取り直して頑張って、しっかり優勝してくれた」

 そして「パリで至学館のオリンピック代表がいなくなったのは残念だけど、金城や南條、それに50キロ級の吉元玲美那(23=KeePer技研)と62キロ級の稲垣柚香(22=至学館大)の4人の至学館が優勝したんですよ。ここからまた鍛え直していかなきゃ」と意欲を見せた。

 五輪3連覇の吉田沙保里(41)、五輪4連覇の伊調馨(39)を中心に、東京五輪での志土地(旧姓・向田)真優(26)に至るまで、至学館大での教え子が14個もの金メダルを日本にもたらした「名伯楽」栄和人氏。だが、2018年には栄氏が伊調らにパワーハラスメント行為をしたとして、弁護士が内閣府に告発状を提出するという騒動が起きた。その後、栄氏は協会の本部長の重責から追われた。管理的な仕事よりもマットサイドの「現場」が似合う男はまだまだ老け込まない。

 栄氏は「育英大が強くなってきている。慶応大の尾崎(野乃香)も強い。負けてはいられない。ロサンゼルス五輪から至学館の復活劇を見せますよ。そんな復活劇ってきっとかっこいいじゃないですか」と笑った。
(一部、敬称略)

粟野仁雄(あわの・まさお)
ジャーナリスト。1956年、兵庫県生まれ。大阪大学文学部を卒業。2001年まで共同通信記者。著書に「サハリンに残されて」(三一書房)、「警察の犯罪――鹿児島県警・志布志事件」(ワック)、「検察に、殺される」(ベスト新書)、「ルポ 原発難民」(潮出版社)、「アスベスト禍」(集英社新書)など。

デイリー新潮編集部

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