川井友香子 パリ五輪への道が絶たれ“至学館大がゼロ” 「いつが最後になるか分からない」姉・金城梨紗子との強い絆も
五輪から消えた至学館選手
さて、川井が敗退したことにより、女子レスリングが五輪競技に採用された2004年のアテネ大会から続いていた至学館大学(愛知県)の出身者が、パリ五輪では1人もいなくなってしまった。2016年のリオデジャネイロ五輪では、出場女子選手のすべてが至学館大学の出身者だったことを思うと、その凋落ぶりは否めない。
会場には日本レスリング協会の副会長で同大学の学長である谷岡郁子氏(69)が観戦に来ていた。感慨をうかがうと、「栄枯盛衰を話せ、ってことですか?」とやや怪訝な表情も見せながらも語ってくれた。
「アテネ五輪の頃は(吉田)沙保里さんらの人気が出て、他の選手たちも含めて強化がうまくいき頑張ってきました。女子レスリングはマイナースポーツでしたから、これを振興させた功績はあったし、当初の役割は果たせたと思います。今はどんどん他の大学とかも強くなってきて、至学館1強ではなくなった。それは普及にとっていいことだと思います」
また「世界的には日本の女子は圧倒的に強い。国としてそこまで持っていけたことに貢献できたのは光栄です。そのせいか最近は、うちの道場でも外国チームの合宿や練習の申し込みが絶えません。ドイツ、ノルウェー、モンゴル、アメリカ、カナダ、ウクライナなどが参加してきた。今後は日本だけがメダルを独占していっても女子レスリングにとっていいことにはなりません」などと話した。至学館のみならず日本として「1強」ではなくなることのメリットを感じているという。
さらに「至学館の道場で2週間、練習していたウクライナのユリア・トカチ選手が今年9月の世界選手権(セルビア)で銀メダルを取った。嬉しいことです。世界にはまだ五輪で女子がメダルを取ったことがない国もたくさんある。そんな国に女子レスリングが初めての金メダルをもたらしてほしい」と国際通らしく話した。
英語が堪能な谷岡氏には世界レスリング連合(UWW)の理事就任という期待もかかる。こうしたところに日本レスリング協会からの人材がないと重要な情報が入らない。それを向けると「語学力の問題もあるのかもしれないけど、私が本当に望まれていれば立候補もするかもしれません。まだ理事になったこともないので、どんな仕事をする立場なのかもまだわかりませんけど」などと慎重だった。
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