川井友香子 パリ五輪への道が絶たれ“至学館大がゼロ” 「いつが最後になるか分からない」姉・金城梨紗子との強い絆も

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 12月21~24日、東京・代々木第二体育館で行われた全日本レスリング選手権大会(天皇杯)で東京五輪金メダリストの川井友香子(26=サントリー)が敗れ、女子レスリング界で一強を誇った至学館大学(愛知県)出身者が初めて五輪の舞台から消えた。姉・金城梨紗子(29=同前)とともに戦い続ける川井、そして2人を育てた栄和人氏(63)らを追った。【粟野仁雄/ジャーナリスト】

パリ五輪代表組は不出場

 姉の金城はマットに上がる直前、コーチとともにセコンドに入った妹の川井としばらく抱擁した。12月24日の全日本選手権最終日に「非五輪階級」となる女子59キロ級の決勝が行われた。

 決勝の相手は、至学館大学の恩師である栄氏がセコンドに入った永本聖奈(23=アイシン)。金城は気迫の形相で永本を抱え上げて投げ飛ばす豪快な技を見せ、9対2で圧勝。久しぶりに表彰台の真ん中に立った。パリ五輪代表選手らが不出場という少し寂しい大会だったが、逆に言えば非五輪階級の真の日本一を決める場ともいえた。

 東京五輪で2連覇を達成していた金城は、五輪階級の57キロ級では6月の全日本選抜選手権(明治杯)で櫻井つぐみ(22=育英大)に敗れてパリ五輪切符をつかめず、「五輪3連覇」の夢が消えていた。妹の川井とともに姉妹で東京五輪金メダルを勝ち取ったが、妹も前日の女子68キロ級で敗れ、パリ行きを絶たれていた。

娘は1歳半

 試合後、「勝った後の記者会見なんて久しぶりですよね」と金城は報道陣を笑わせた。そして自らを奮い立たせる動機について吐露した。

「将来、自分が生まれたから母親が弱くなったとは娘に思わせたくないんです。今は娘もわからなくても、記録などが残るし……」

 2008年、北京五輪に挑んだ柔道女子4キロ級の谷(旧姓・田村)亮子(48)は、「ママでも金」と語った。子供を持つ女性アスリートが増えた昨今だが、金城のような言葉は聞いたことがない。

「私、もうすぐ、30歳になるんですよ」と言いながら、今なお維持する闘争心と新たな決意。1歳半になる可愛い娘さんは、将来、この言葉を知って驚くかもしれないが、必ずやそんな母親を誇りに思うはずだ。

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