38年ぶり日本一達成 阪神・岡田監督、2023年“三大パフォーマンス”を振り返る!

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「高津がおらんかってん」

 岡田監督の“越権行為”が話題になったのが、7月19日のオールスター第1戦である。

 4点をリードされた2回、近藤健介(ソフトバンク)の左翼フェンス直撃の打球を、ノイジー(阪神)がクッションボールをうまく処理して二塁に送球。タイミングはアウトに見えたが、二塁に滑り込んだ近藤はセーフになった。直後、村上、梅野隆太郎のバッテリーも含めて阪神勢で固めた内野陣全員がアウトを確信し、ベンチにリクエストをアピールした。

 すると、ベンチを飛び出してきたのは、全セの高津臣吾監督ではなく、なんと、コーチの岡田監督だった「高津がおらんかってん。インタビューか何かしてたんちゃう?みんながアウト、アウト言うから。高津がいてなかったんや。だから、しょうがなしにオレが」。

 にもかかわらず、場内放送では「高津監督よりリクエストがありましたので」と事実と異なる説明があったため、スタンドからどよめきと笑いが起きた。

 検証の結果、判定が覆ってアウトになり、見事リクエスト成功。リクエスト時にブルペンを見に行って不在だった高津監督も「モニターを見ていたら、何か岡田さんがやってるよって。あれっつって。オレの仕事……て思って」と苦笑いだった。

 今季のVにより、来年の全セは岡田監督になるが、今にして思えば、あの“越権リクエスト”は予告編だったのかも?

「オレは引かん!」

 ふだんは温厚な岡田監督が、鬼の形相で猛抗議を繰り広げたのが、8月18日のDeNA戦である。

 問題の場面は、1点を追う阪神が9回1死一塁、打者・木浪聖也のカウント2-1からの4球目に一塁走者・熊谷敬宥が二盗を試みた際のタッチプレー。

 ショート・京田陽太が二塁ベース手前で、ベースを足で塞ぐようにして熊谷にぶつかる形でタッチした。小林和公二塁塁審は「セーフ」をコールしたが、DeNA・三浦大輔監督がリクエストすると、検証の結果、責任審判の敷田直人三塁塁審は「故意とかではなく、お互い精一杯のプレーをして、偶然あのような形になって、ベースに届かなかった。そこでアウトにするしかないと判断した。走塁妨害というふうには見ていない」と判定を覆した。

 直後、岡田監督が怒りもあらわにベンチを飛び出し、「オレは引かん!」と激しく抗議したが、走塁妨害は認められず、結局、阪神はそのまま1対2で敗れた。

 だが、岡田監督の抗議は無駄にならなかった。阪神がNPBに意見書を提出したことを受け、9月5日、ブロッキングベースのルールが採用されたのだ。「不可抗力なので(走塁)妨害ではないのですが、走者の不利益を取り除くというところで進塁を認める」(森健次郎審判長)というもので、今後同様のケースではセーフになる。

 事実上、新ルールの生みの親となった岡田監督は「そら当然やろ」とコメント。優勝を争う重要な試合で、ひとつの判定が結果的に勝敗に影響したことも考慮されたのだろうが、勢いに乗ったチームは、ルールをも変えてしまうようだ。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

デイリー新潮編集部

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