ゴジラ俳優「薩摩剣八郎さん」死去 金正日肝いり「怪獣映画」に出演 かつて明かした北朝鮮“極寒の撮影秘話”

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まさかの「お蔵入り」

 撮影自体も、順調とは言えないものだった。停電は珍しいことではなく、また資材が足りなくなっても、簡単に取り寄せることさえできないのだという。

「もし途中で足りないものが出れば、また改めて申請し、現場に届くまでに三、四日は確実にかかるのだ。それがすべて、クギ一本にいたるまでそうなのだ。仕方なく、日本人スタッフは、使い古しのクギを伸ばして利用したりする始末だった」

 こうした苦労の末に完成した『プルガサリ』。だが、なんと公開直前にして監督が米国に亡命。作品はお蔵入りとなり、突如としてその全容は謎に包まれることになった。

「おいどんたち日本と北朝鮮のスタッフが限りない情熱と愛情を込めて作り上げた映画『プルガサリ』は、二つの朝鮮という政治の渦の中に生まれ、そしてまた、その渦の中へ水泡のように消え去ってしまったのだろうか……。だが、いつの日か、『プルガサリ』が人々の目に触れる機会が来ることを信じたい」

 結局日本で上映されたのは、1998年。完成から13年後のことだった。

 こうして現地で濃密な時を過ごした薩摩さんだからこそ、北朝鮮に対する見方も特有のものがあった。97年、金正日書記が朝鮮労働党の総書記に就任した際は、こんなコメントを読売新聞に寄せている。

「映画の好きな金正日さんのことだから、映画をまた作るでしょう。そのときはぜひ呼んで欲しい。総書記になったらもっと公の席に出て、冗談の一つも言って欲しい。これからオープンな国になってもらいたい」

 薩摩さんの目には、その後の北朝鮮はどのように映っていたのだろうか。

デイリー新潮編集部

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