決勝でハマった「令和ロマン」の戦術、新旧交代も顕著だった…今年の「M-1グランプリ」を業界のプロが総括

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令和ロマンの戦術

「ファーストラウンドで1位となり大本命だったさや香は、決勝の順番とネタ選びでしくじったと思います。最終決戦の順番はファーストラウンドの1位から決めることができるのですが、自分たちを3番目のトリにしました。ところが、1番手の令和ロマン、続くヤーレンズが思いのほかウケて、彼らも慌てたのではないでしょうか。その上、ネタは四則演算に加えて新たに作ったという“見せ算”を解説する独自の世界観でした。審査員も彼らの慢心を見抜いたのか、誰も票を入れなかった。番組の終了間際に山田邦子が、『さや香の最後のネタ、全然良くなかった』と言い放ったのが全てだと思います」

 7人の審査員の得票を分け合ったのが、令和ロマン(4票)とヤーレンズ(3票)だった。いずれもまだあまり見かけない顔だ。

「トップバッターで優勝を果たしたのは、第1回(01年)の中川家(剛=53、礼二=51)以来。平成生まれの優勝者は18年の霜降り明星(せいや=31、粗品=30)以来です。令和ロマンは二人とも慶応大学出身(高比良は文学部中退、松井は法学部卒)で、知性のあるボケとツッコミでした」

 ちなみに、松井の父親は大和証券副社長で最高執行責任者を務める松井敏浩氏だ。

「松井の髪と顎髭の繋がった顔をなでながら、高比良が『なぜもみあげと髭をつなげているのかというと……顔の内側を日本から独立させようとしているから』というツカミで観客の心を鷲づかみにし、会場の空気を支配したのが大きかったと思います。加えて、松本さんが言った『ファーストラウンドを上回るネタを最終決戦に持ってきた』戦術、度胸の良さもあった」

喋りっぱなしのヤーレンズ

 ヤーレンズも面白かったが――。

「1票差で優勝を逃したのも、松本さんが言っていた『ずっと面白いから……ちょっと疲れちゃった感じ』が言い得て妙でした。19年優勝のミルクボーイ(内海崇=38、駒場孝=37)、10年優勝の笑い飯(哲夫=49、西田幸治=49)のように、観客に考えさせて頷かせる“間”が必要だったのでしょう」

 ヤーレンズ楢原は、審査員のコメント中も喋り続け、司会の今田耕司(57)から注意されていたほどだった。これはこれでキャラが立っていた。

「相方の出井も芸人仲間では知られているようで、16年には南海ヤンディーズの山里亮太(46)が彼を“潰したい若手芸人ランキング”の5位に挙げていました」

 嫉妬深い山里の目利きなら信頼性も高いかも。とはいえ、そこから7年は長かった。

「顔の知られた芸人が優勝するよりも、やはりニュースターが生まれると影響力は大きいし、視聴者ももっと彼らを見てみたいと思うようになるものです。年末から来年にかけて、彼らは引っ張りだこになるでしょう」

 令和ロマンは優勝コメントの最後に「来年も出ます!」と言っていたが、可能なのだろうか。

「03年に優勝したフットボールアワー(岩尾望=48、後藤輝基=49)が06年に再出場して2位、08年に優勝したNON STYLE(石田明=43、井上裕介=43)が09年ににも出場して3位になった例があります。01年にスタートした『M-1』は10年を最後に一時中断しましたが、15年に復活してからは優勝コンビが再挑戦した例はないと思います。その意味でも、来年も期待できる『M-1』になったと思います」

デイリー新潮編集部

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