ファン必読!『翔んで埼玉~琵琶湖より愛をこめて~』監督が綴る撮影“食卓”日記
日本アカデミー賞監督賞など最多12部門を獲得し、興収37.6億円のヒットを記録した『翔んで埼玉』の続編『翔んで埼玉~琵琶湖より愛をこめて~』がいよいよ封切り。初週の週末3日間で29万2300人を動員し、初登場1位を記録した。
前作に続きメガホンを握った武内英樹監督は、およそ1年前、「週刊新潮」の人気連載「私の週間食卓日記」に登場。この映画のクランクアップ前後の貴重な1週間を綴ったものだった。ネタバレはないので、まだ映画を観てない方も安心してお読みいただきたい。既に鑑賞済みの方は「あのロケはこんなに大変だったのか!」「あのシーンは最後に撮影していたんだ」など新たな発見がいっぱいである。
ぜひ、武内監督の“粉物中毒”っぷりにツッコミを入れながらお楽しみいただきたい。
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映画監督をしているとふと幸せだなと思う瞬間がある。国内国外いろいろな場所に行き、ご当地グルメをいただけることだ。
今回は映画「翔んで埼玉2(仮)」を撮影中の食卓日記をお届けします。
12月6日(火)
彦根城で撮影のため、新幹線で米原へ行き彦根城へ。すでに先行していたスタッフと200人のエキストラが待つ撮影現場に到着。寒い中ふんどし姿に扮装してもらって申し訳ない! 計300個のお弁当が用意されていてその中のシャケ弁当をいただく。身長166センチ体重70キロ。これ以上体重を増やしたくないので、基本的に朝食は食べない。最近流行の16時間食事を空けるダイエットをやっているが、大体14時間で食べてしまっているので効果はあまり出ていない。クランクアップまであと6日。ロケ弁との別れは近い。滋賀県名物の鮒寿司とサラダパンをいただく。寿司というよりもブルーチーズに似た強烈な匂いが鼻の奥をつく。とても日本酒に合う逸品だ。サラダパンはサラダというよりも漬物のマヨネーズ和えを挟んだパンでこれまた美味であった。夜は東京からきた友人と大阪北新地の寿司「いわもと」さんに行く。ウニご飯の上にウニがのっている握りが秀逸だ。トロたくの手巻きも海苔がパリッとしていて美味しかった。その後大阪の夜を友人と楽しむ。やっぱり大阪の人は面白いな! 会話にウイットがあるし、何時間話していても話題が途切れない。酒も進み大阪の夜は楽しくふけてゆく。生まれ変わったらイタリア人か関西人になりたい。
12月7日(水)
午前中、通天閣に新しく出来たスライダーで撮影する。映画の中でどう使われるかは観てのお楽しみ! その後神戸市のダムで撮影し、大阪に戻り「コロンビア8」さんのキーマカレーをいただく。ものすごく多種多彩なスパイスが入っており複雑な味にとてもハマって、また食べたいと店主に伝えたところ、東京駅八重洲地下街に支店があるとのこと。東京に帰ったら行ってみよう。夕飯は北新地の串揚げ「again」さんで沢山のサラダと絶品串揚げを8品ほどいただく。ワインとお料理をカップリングしてくれるお洒落なお店だ。大将も気さくでとにかく話が面白い。串揚げを食べているのか大将の話を食べているのかわからないほどだ。
12月8日(木)
びわ湖テラスでロケ。マイナス2℃の山頂での撮影は堪える。竹生島を眺めながら牛丼弁当を食す。何故「翔んで埼玉」を琵琶湖で撮影しているのかはまだ秘密。大阪に戻り吉本の芸人さんの漫才を撮影し、3日間の関西ロケは無事クランクアップ。夜は東映関西支社の方々と居酒屋で打ち上げ。居酒屋メニューとたこ焼き。その後野田阪神にある地獄谷のスナックで呑む。地名に負けないディープな飲み屋街だ。ママの歯に衣きせぬ物言いは強烈で、我が映画作品がバッサバッサとママに論評されていく。そこまで言うかというほど言われ、逆に心地よくなってくる。ママのキャラが濃すぎ。さすが大阪。
12月9日(金)
朝起きるとホテルのロビーに次の作品のスタッフが10人ほど待ち構えていて、そのままロケバスに乗せられ兵庫県をロケハン。鬼だ! フジテレビを退社し今年からフリーになったのだから、仕事があるのはありがたいが。神戸のうどん店「いなみころ」さんで天ぷらうどん。出汁が濃いめで美味しい。夜はロケハンスタッフと居酒屋で刺身、たこ焼きなど食べてまた地獄谷へと吸い寄せられる。そしてまたたこ焼きを食べながら記憶を失う。地獄谷恐るべし。
12月10日(土)
ロケハンで奈良県天理市へ。初めて来た天理教の街だ。宗教施設が点在し、独特な雰囲気を醸し出している。天理駅前のアーケードにある蕎麦屋でカツ丼をいただく。その後新幹線で帰京。夜は次の作品の取材も兼ねて女医さんらと会食。カワハギの肝と刺身、おでん、牛肉時雨煮。美味しいのでついつい酒がすすむ。地獄谷の後遺症で肝臓が泣いている。
12月11日(日)
お台場のフジテレビ湾岸スタジオで「翔んで埼玉」撮影最終日。長かった撮影もいよいよ今日で終わる。あまりにも奇妙なシーンばかり撮っていたのでどんな作品になるのか不安であり楽しみでもある。傑作かそれとも世紀の珍品か? 完成したら地獄谷のママにも観てもらって感想を聞いてみよう。目から鱗が落ちるような意見が聞けそうだ。昼飯は撮影で使ったお好み焼きとたこ焼きを打ち上げのビールと共にいただく。この瞬間が映画監督として最高に幸せな時だ。しかし今週たこ焼き食べすぎだろ! 夜は久しぶりに自宅で昨日の食事会で余った牛肉時雨煮とじゃこ、漬物を食べながらクランクアップの余韻に浸る。酒を飲みたいところだが、明日も呑まなければならないので休肝日とする。
12月12日(月)
今日は一人娘の18歳の誕生日。受験勉強頑張っているかな? 父も映画製作頑張っているよ! 昼は自宅でふるさと納税でいただいた福岡県のハンバーグを食べる。毎年送ってもらう逸品だ。毎日撮影現場でスタッフ、エキストラ含めて数百人と一緒にお弁当を食べてきたので、一人で食べる昼食は何とも言えぬ寂寥感がある。夜は友人と六本木で焼き肉を食べる。肉を焼きながらすでにたこ焼きを欲している自分に気づく。大阪で粉物中毒になってしまったのか? 恐るべし地獄谷の粉物!
こんな感じの師走の慌ただしい“翔んで関西”お食事日記でした。採点は厳しめにお願いします。
なお、武内監督は現在、「もしも徳川家康が総理大臣になったら……」という設定の作品を撮影するため静岡でロケを行っているという。
【荒牧麻子先生のアドバイス】
生まれ変わったらイタリア人か関西人になりたいと吐露する武内さん。映画の撮影現場を行き来する人生の中で、突如飛び出した感のある一言。会話にウイットがあり、何時間話していても話題の途切れない人々に深く魅了されたご様子。
さて、あと2、3キロの減量は、身長から割り出す適正数値からも勧めたい。
何百人ものスタッフと一緒のロケ弁や、クランクアップ後に囲む打ち上げなどの食卓は、欠かすことのできない、一種の儀式。長時間の空腹は身体も冷える。一日2食で必要な栄養は賄えるが、飲酒量も合わせると過食は否めない。夕食は1回にと言いたいし、気になっている粉物も、時に余分となり得る。
かくなる上は、ロケ現場に足を運ばない期間に集中ダイエットか。65点
(味覚のギャラリー主宰/献立評論家・管理栄養士)