【パー券裏金問題】東京地検特捜部は朝日とNHKを使って世論形成を図ろうとしているのか 「検察リーク説」をベテラン司法記者に聞いた
マスコミの責務
マスコミ各社は、獲得した検察情報についてきちんと裏付けを取り、正確な内容だと確信を得たうえで、その情報発信が公益に資すると判断できれば記事にする――。これこそが報道機関の責務だという。
「パーティー券を巡る問題で、朝日とNHKが重要な記事を報じているのは事実です。しかし、短期間に特定の報道機関が突出してスクープを連発することは珍しくはありません。その時の担当記者の実力や取材相手に恵まれる運など、複数の要因が重なります。朝日だから、NHKだからというだけの理由で、検察が優遇することはないでしょう。来年になれば、読売や毎日がスクープを連発しても不思議はありません」(同・ベテラン記者)
司法記者クラブに所属する朝日やNHKの記者であれば、自動的にリーク情報が入ってくるわけではない。検察官は国家公務員であり、厳しい守秘義務が定められている。司法担当記者は「夜討ち朝駆け」といった様々なアプローチを駆使し、彼らの堅い口をこじ開けようと全力を尽くす。
「例えば、アメリカの捜査機関は、相当量の捜査情報を適示開示します。そのためアメリカの記者のアプローチは、日本の司法記者とは全く異なります。一方、日本では政治家など国家権力の中枢に斬り込む捜査は東京地検特捜部が担当し、国民からも期待を集めているという歴史があります。日本の捜査機関が情報を開示することはほとんどありませんから、その動きを報じる責務がマスコミにはあります。また、強大な権力を持つ検察のチェック機能も果たさなければなりません。ある大物政治家に疑惑が浮上しても、捜査が途中でストップしたのなら司法記者は真相を報じようと取材を重ねる必要があります」(同・ベテラン記者)
バランスの取れた取材
これまでに「検察リーク説」を唱えてきたのは主に政治家という事実も大きい。
「政治部の記者を批判するつもりはありませんが、彼らが政治家と“一心同体”であるのは事実ですし、それが求められています。そして、特捜部が動くと、政治家は政治部の記者に『検察のリークだ』と、それこそリークするのです。この真偽を正しく見定めるためには、やはり検察の捜査情報をキャッチすることが求められます。報道機関は一方で政治家、もう一方で検察に取材を重ねることで、バランスの取れた報道を行っていると思います」(同・ベテラン記者)
註1:リクルート捜査沈黙に乱れる情報(ニュース三面鏡)(朝日新聞:1989年4月6日夕刊)
註2:「検察リーク」 権力報道PART3=検察・警察編:9(メディア)(朝日新聞:1992年8月4日朝刊)
註3:【正論】評論家 西部邁 「特捜」よ、奢るなかれ(産経新聞:1998年1月29日朝刊)
[3/3ページ]