「岸田政権」ジリ貧でも、なぜ株高は続くのか? ドイツ銀行が「日本円はリラやペソと同じ」と指摘した本当のワケ
日本株の「コモディティ化」
政治と経済の乖離が進むにつれ、日本の国力も低下——。それを端的に指摘したのが、11月1日にドイツ銀行が投資家向けに発表したリポートだ。内容は「日本円のファンダメンタルズ(基礎的要因)は非常に弱い」と指摘した上で、その利回りや対外収支は、過去10年で90%以上下落(対ドル換算)した「(信認の低い)トルコ・リラやアルゼンチン・ペソと同じ部類」と評価したのだ。
田代氏が続ける。
「世界における日本のプレゼンテーションが低下するのは安倍政権の後期から始まりますが、ここ数年はそのスピードが加速しています。たとえば日本のGDPをアメリカのGDPと比較した際、ドル建てベースの単純計算で95年は(対米GDP比)72.6%でしたが、22年には同16.6%にまで低下。経済的インパクトを喪失した日本に国外の機関投資家が興味を失っていることは、米経済紙ウォール・ストリート・ジャーナルを見ればよく分かります。同紙の記事検索で“Fumio Kishida”と入れてもヒットする記事は皆無で、代わって最近、日本関連で大きく取り上げられたのは手塚治虫の『鉄腕アトム』や竹宮惠子氏の『地球(テラ)へ』といった日本の〈漫画遺産〉です」
「日本の政治」より、グローバルにファンを獲得する「漫画遺産」のほうが“ニュースバリューがある”と同紙が判断したと見られている。また最近の好調な株価の裏側についても、田代氏はこう話す。
「今世紀に入ってから投資の世界では『日本株のコモディティ化』が語られてきました。原油や小麦といったコモディティは“誰がつくったか?”は問題とされず、『安ければ買って、高くなったら売る』投資対象に過ぎない。同様に日本株も発行した会社が吟味されることはなく、すでに“安ければ買い、高くなったら売る”投資対象になっているとの意味です。日経平均株価が上昇基調にあるのはその通りですが、まわりの投資家を見ると、日本株を長期保有するのでなく、“安値買い・高値売り”の投資スタイルが主流になっている。現状、ドル換算した株価が歴史的な円安で大きく値下がりしているので外国機関投資家が日本株を買い、日銀の日本株の大量購入と相まって、日経平均株価が押し上げられているという構図です」(田代氏)
永田町が右往左往している間にも、日本の経済力は日々削がれている。