息子と妻に不倫がバレて家庭崩壊へ…その後、“ごく普通のいい子”だった50歳がとったゲスい行動とは
「恋心なんてありません」
その恥ずかしさが、彼の心を彼女に寄り添わせたのだろうか。彼は「息子のために」彼女をもっと知りたいと思った。息子が20歳年上の女性と結婚することにリアリティはなかったが、目の前の彼女はリアルで魅力的な女性だったのだ。おそらく彼はその時点で、彼女に恋をしかけていたのではないだろうか。
「恋心なんてありませんでした」
彼はそうきっぱり否定する。息子の彼女なのだから、と。だが彼女は息子よりも、卓哉さんに年齢が近いのだ。
「とりあえず悪い人ではなさそうだし、結婚は今は考えられないと言っている。そのことだけ妻に報告しました。妻は『何もあなたが会いに行かなくてもよかったのに』とは言ったけど、ホッとしたようでした。息子には僕から話しました。少し落ち着け、と。頭から反対はしないが、彼女自身が結婚は今のところ考えてないというのだから、まずは大学を卒業したほうがいいと説得したんです」
反対されなかったことで安心したのか、息子も反抗的な態度はとらなかった。
息子に言えない逢瀬
それから数週間後、菜穂子さんから卓哉さんに連絡があった。
「息子が何かやらかしたかと思って会いに行くと、菜穂子さん自身の子どもに関する相談でした。『それぞれの父親とは連絡をとりあっているけど、ふたりとも家庭があるのでなかなか相談もしづらくて』って。上の14歳の長男が中学を出たら働くと言い出している、なんとか高校は行ってほしいんだけど、どうやって説得したらいいかわからない、と。母親だけだから家計のことも気にしているんだろうけど、高校へは行かせてやれるんだからと言っても信じてくれないんだそうです。優しい息子さんですね、おかあさんが一生懸命育てたんだろうなと思わずつぶやいてしまいました。菜穂子さんの顔を見たら、すごくうれしそうだった。『自分の好きなように気ままに生きてきたから、子どもに迷惑ばかりかけちゃって』と照れくさそうだったけど、ちょっと羨ましかった。自由に生きてきて、でも子どももそんなやさしい子に育って……」
継続的に話を聞きたくなって、次は卓哉さんから連絡した。ふたりとも自分の気持ちに蓋をしたまま、逢瀬を続けたのだ。本当は惹かれ合っていることに気づいていたはずなのに。
「菜穂子さんに会っていることは、妻にも息子にも言えなかった。菜穂子さんは徐々に息子とは距離を置く方向で考えていると言ったんです。それは僕への告白だったのかもしれない。それでもお互いに会って話す以上のことはできなかった。でもあるときふっと手が触れあったことがあった。ふたりともびっくりして顔を見合わせました。本当に電流が走ったような感じだったんです。『もう、無理かもしれない』と彼女が言いました。『僕も』。彼女はいつもは何も言わないけど、『今日は近所に住む母に子どもたちを頼んできた』と言いました。そして食事を終えてからホテルに行ったんです」
その時点では、息子のことは考えられなかった。目の前の菜穂子さんと、どうしてもひとつになりたいとだけ思いつめた。
「ベッドの中の彼女も素敵だった。でも次の瞬間、この人と息子が関係をもっていたんだということが蘇ってきて。何をどうしたらいいかわからなくなりました。それなのに別れ際、『また会えるかな』と言ってしまった」
息子の恋人を盗ったという感覚はなかったと、卓哉さんは何度も言った。だが、事実としては、やはり息子の恋人を盗ったのだ。これが息子に知れたら、彼はどんなに傷つくだろう。菜穂子さんは「私は何も言わない。清志には、それとなく別れを切り出しておくから」と淡々と言った。
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