「マスクは私を差別から守ってくれなかった…」 在日外国人が見た“コロナ禍の日本”
マニュアルでそうなっている
この日、私達は短時間の滞在予定でしたが、約3時間院内で過ごし、そのうちの半分の時間は私がマスクをしていなかったことでスタッフや警備員から叱責された時間です。理由は、他の患者たちをいかに動揺させるか、という点にあります。患者の中には寝ている時もマスクを着けている人がいました。
病院の言い分は「マニュアルでそうなっている」というもの。しかし、私は精神的に辛いのです。この病院に来始めてから何度もマスクの苦痛を訴えましたが、それはその都度無視されました。
「マスクを着用できない」という私に関する書類には「非常識なヤツだ」といった落書きがされました。看護師は人間味の全くない、私の苦痛を無視したレクチャーを延々と続けたのです。もちろん私は動揺し、その旨も彼らに伝えました。夫は妻が動揺しているのを理解しつつも、なんとか平静を保ち、私のことを守ってくれました。
私はコロナ陰性でした。大部屋の病室のカーテンを開けてトイレへ行く時、一言も発さないのに、マスクをしなければならない。私は陰性なのだし、他の患者も陰性なのになぜマスクをしなくてはならないのですか? と私は科学的な説明と着用が必要な理由を伝えるよう求めました。
ただただ消え去りたかった
しかし、基本的に看護師からの説明は「あなたが他の患者やスタッフから目をつけられて注目されないために、マスクをしなければならない」というものでした。つまり、マスクは批判されないようにするための必須アイテムであり、仮にそれを着けて窒息死したとしても、苦痛で精神をさらに病んでも問題ではないようです。それだけ日本の病院ではマスクが大事なのです。
この時、私はモンスター患者のような扱いを受け、手術の延期と中止を検討することもちらつかされました。とにかく待つよう伝えられると、このまま入院を延期させて、私に仕事をさせないように仕向けているのではないか、と感じました。この時、私はただただ、消え去りたかったです……。
手術の実施にはマスク着用を条件にされるよう伝えられ、それでも困難な旨を伝える攻防は続きました。最終判断を待つ間、夫はマスク着用の強制をしてはいけない、という厚生労働省の通達を発見しました。
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