「マスクは私を差別から守ってくれなかった…」 在日外国人が見た“コロナ禍の日本”

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海外が正常化に向かう中で

 もう、病気については何が何やら、という感じですが、私は慢性的な偏頭痛持ちでもあります。元々身体も精神も強い方ではないのですが、コロナ騒動はその苦痛を加速させました。この期間、狭い箱に閉じ込められているような気分になり、絶望的に孤独でした。本当に消えたい、と何度も何度も思いました。

 完全にボロボロの人生だと思います。それなのになぜ、私がまだ日本にいるのかと疑問に思うかもしれませんが、私には「無限」という表現を超えるほど愛している素晴らしい日本人の夫がいるのです。彼と別離することは絶対にしたくないので、他の場所に引っ越すことは不可能です。

 それだけ彼のことを愛してはいますし、彼のいない人生を想像することはできません。でも、私には本当に居場所がなかった……。場合によっては別れることを何度か考えました。「別れる」、というのはまぁ察してください。

 海外が正常化に早く向かう中、日本で生活するのは非常に大変でした。自分なりにその時間がもたらしたものを考えてみました。無理矢理自分を納得させようと思っているのは分かりますが、マスクを外すことで「少なくとも私は少しだけ強くなった」と思えるようになったことです。あとは、周りの顔の見えない人々すべてを気にしないようにし、顔を隠すことを強制される以外の場所に行くように最善を尽くしました。

特記事項として記入

 しかし、私が1ヶ月前に急性虫垂炎と診断され、手術について話し合うため、総合病院に行った時のこと。入口に足を踏み入れた瞬間でした。「あなたはマスクをしていない!」と怒鳴られ、門番から追いかけられました。普段行く内分泌系のクリニック、診療内科、歯科医ではマスク着用は求められません。そういう意味ではラッキーだっただけかもしれませんが……。

 前述の通り、マスクを着用することが精神的に苦痛であることを伝えたら、スルーされました。妥協する姿勢をみせるべく、夫が「自分はマスクを着けるから彼女のことは許してくれませんか?」と言うと、門番の警備員は私を追い出す、と言い出しました。

 しかし、私が本当にマスクをするのが苦痛だと説明したところ、最終的に病院からは了承を得ました。そのため、私がマスクするよう求められないことを特記事項として記入してくれました。ようやく一安心です。

 私の手術は当初の予定から2週間延期されましたが、手術の3日前に私たちは麻酔科医との打ち合わせのために病院に行きました。この時、もちろん、新型コロナウイルスのPCR検査が必要でした。

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