「獄中に7カ月」「出所後は“思想教育”」 亡命した香港民主化運動の女神・周庭(アグネス・チョウ)が明かした中国の人権侵害の実態
PTSDやうつ病を発症
出所後は、
「いつまた逮捕されるかわからなかった。拘束されれば携帯電話が没収され、警察にメッセージのやり取りをすべて見られてしまいます。だから一緒に活動してきた友達とも連絡を絶ちました。逮捕の可能性が増すのでSNSの更新もやめました。これから10年20年30年、香港でどう生きられるのか想像すらできない。とても穏やかに暮らせる環境ではありませんでした」
彼女は心の病を発症した。
〈またいつでも拘束されるのではと心配になり、帰宅後も国安当局が以前のように、ある朝わが家のドアをたたいて鍵を破壊しようと試み、扉を破って入ってきて、何らかの罪名で私を連れ去るのではないかという想像が消えませんでした。毎日、こうした想像は私の頭のなかに湧き起こり、大泣きして崩れ落ち、震え、あるいは友人に恐怖を訴えるよりほか、私には何もできませんでした〉(Instagramより)
不安障害、パニック障害、PTSD、うつ病との診断が下されたという。
「懺悔書」の提出
そうした中、彼女は今年になってひとつの決断をする。カナダの大学院の修士課程に進学を申し込んだのだ。青春を無駄にしたくない――そう考え履歴書を提出したところ、入学が認められた。
が、当局は妨害を加えた。
「国安当局に申請を出すと、面談が頻繁になりました。ある日は狭い取調室で5人ほどに囲まれ、7時間もさまざまな個人情報を聞かれた。長時間の尋問に疲れ、言いたくない話を言ってしまうのを狙ったのでしょう。また、学校へのオファーの手紙や学費や入寮費の領収書などの書類もすべて提出させられました」
さらには「懺悔(ざんげ)書」の提出も求められた。
「“私は今までの社会運動への参加を後悔しています。今後は決して参加しません。以前活動してきた仲間とも連絡をしません”という内容でした。もちろん本心ではありません。すべて警察の言った通りに書かされました」
進学するためには仕方ないと、己を納得させた。
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