「恋人たちの聖夜」って何? いつのまにか「クリスマスイブ」が“家族や友達と楽しむ日”になっていた

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多過ぎたイベント

 同じようなことは私のアメリカの高校時代にもあった。高校4年生(日本の高校3年生)は卒業直前にPromというダンスパーティに参加するのだが、モテない男女は相手がいないため、この日はモテない同性4人ほどで誰かの自宅の地下室に行き、ヤケクソ気味に宅配ピザを食べ、ペプシをガブ飲みし、「あいつら今頃ヤッてるんだろうな、クソー!」などと地団太踏んでいたのだ。一方、日本の男は大学生~若手サラリーマンになってもクリスマスをめぐり同じようなことをやっていたのだ。

 しかし、いつしか時は流れた。KFCのクリスマスCMに顕著なのだが、いつのまにかクリスマスは家族や、友達同士で楽しむものとなり、恋人たちの特別な性夜、いや聖夜ではなくなったのだ。ライフスタイル研究家やら社会学者は「若者の草食化」や「バブル期の大盤振る舞いをダサいと思うデジタルネイティブ世代の感性」などと分析したくなるだろうが、単にあの時代が異常だったのと「恋愛至上主義」という世の中の流れが非現実的過ぎたのだろう。

 何しろ、あの頃は恋愛イベントが多過ぎた。クリスマスが終わると2月にバレンタインデーがあり、3月にホワイトデーがあり、7月は花火大会、8月は夏祭り、11月は学園祭といった具合に、メディアや時の「トレンド評論家」的な人々は常に若者の恋愛を煽ってきたのだ。

二次元の方がいいや

 そんな状況はキツいに決まっている。クリスマスイブほどではないが、シングル男性は、毎度冒頭のような惨めな感覚を抱き続けるのだから。常に競争状況に身を置いているのもキツいし、当時のトレンディー系情報雑誌は「ホワイトデーのお返しはコレが女のコから喜ばれるゾ!」みたいな特集を組み、消費を煽る。

 さすがにそこまで来ると「もういいわ、放っておいてくれ!」となってしまうのである。その反動もあったのか、男の場合は結局「二次元の方がいいや」や「セクシー動画がいくらでもネットで見られるからいいや」的なメンタリティにもなっていく。そもそも30年成長していない国の若者にカネがあるワケがない。

 バブル崩壊後、「クリスマスイブは高級フレンチやイタリアンでなくてイマドキカップルは『モツ鍋』を食べるつましい身の丈に合った過ごし方をする」的分析があった後、少しずつクリスマスイブが「恋人たちの特別な夜」ではなくなっていった。

 結局テレビを中心としたメディアが文化を作っていくわけで、その後「ママ友」「タピオカミルクティーがブーム」「これからは恋人だけでなく、“友チョコ”」「イクメン」「祖父母の呼び方は“じいじ”“ばあば”」「じいじとばあばは9月になると新1年生の孫にランドセルをプレゼントする」などといった風潮が生まれていく。

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