大谷翔平の巨額契約「1015億円」のわずか“3分の1”…スポーツ国家予算「359億円」で“後進国”になり下がった日本の現実

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なんと10倍も

 かつて、野茂英雄投手や松坂大輔投手がメジャーリーグで活躍した際には、「ジャイロボール」が一世を風靡した。「打ちにくいのは縦回転でなくジャイロのような横回転のボールだ、松坂はそういうボールを投げている」と言われ、夢見る野球少年の親たちは飛びついた。結果、肘を壊す少年たちが増えてしまった。上辺だけの分析でさも画期的な発見のように喧伝される野球理論にはこうした副作用(危険な弊害)があることも理解する必要がある。だが、いまのお祭り騒ぎに囲まれていると、そんな冷静な警句は届かない気がする。

 別の角度から見れば、アメリカ(MLB)の球団には1000億円が払えて、日本(NPB)の球団はなぜ10億円さえ払えないのか? その違いは何かを追求するメディアも少ない。

 しばしば引き合いに出される事実だが、野茂投手がメジャーに挑戦した1995年当時、MLBとNPBの市場規模はいずれも約1500億円でほとんど差がなかった(日本は約900億円だったとの説もある)。それがこの約30年間で大きく変わった。NPBは微増の1800億円、MLBは1兆5000億円。なんと10倍も伸びている。「失われた30年」と日本経済が表現されるが、野球界も同様だ。

浮かれていない人物

 なぜこのような差ができたのか。ストライキの深刻な影響で存亡の危機さえ感じたMLB関係者は根本的な組織改革に取り組み、全球団が一元的な経営システムに同意して「MLB株式会社」ともいえる体制でコミッショナーの下、新ビジネスを展開してきた。他方、日本は読売や阪神など既得権を持つ球団のオーナー企業が自分たちの権利を守ることを優先し、ビジネスをオープンにせず今日まで進んで来た。その結果が二桁も違う選手の待遇に表れている。読売をはじめ日本のメディアは、お祭り騒ぎに乗っかって大谷フィーバーを報じ、部数や視聴率を稼いでいる場合ではない。

 日本中が浮かれている中で、浮かれていない人物が間違いなくひとりだけいる。

 大谷翔平自身だ。

「1015億円の97パーセントが後払い」という契約概要が伝えられた。アメリカでは賛否両論あるようだが、「自分は年に3億円あれば暮らせるから」という冷静な判断が前提にある(まあ、私たちは年間3億円なくても暮らせるが)。大谷はなぜ、そのような堅実な思考ができるのか。どうやって彼の人格が形成されたのか。そのことにも注目すべきだろう。

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