ド派手なロシア空軍のアクロバット機が日本海上空を飛んで大騒ぎに…ロシア軍の情けない実情が浮かび上がったとの声が
宣伝効果を狙った可能性
言うまでもなく、ロシアン・ナイツはロシア空軍の中でも選りすぐりのエリート部隊だ。
「パイロットの技量は抜群で、使う機体も常に最新型です。中でもSu-35のジェットエンジンは、推力偏向ノズルが縦方向と横方向に動くため、普通の航空機ではあり得ない曲技飛行が可能です。航空ショーでは信じられない動きを披露し、観客の度肝を抜きます。ちなみに、ロシア空軍には『ストリージ』というアクロバットチームもあります。ストリージは『MiG-29』などミグ設計局の、ロシアン・ナイツはスホーイ社の戦闘機を使います」(同・軍事ジャーナリスト)
テレビ朝日は東京大学先端科学技術研究センターの小泉悠准教授に取材を依頼。「中国との合同空中パトロールということなので、何か記念撮影的なことがしたかったとしか思い浮かばない」とした上で、「外交活動」と指摘した。
「共同飛行と言えば聞こえはいいが、要するに示威行動です。アメリカと日本に見せつけているのは明らかで、中国の国防部も14日にロシアと『合同の戦略飛行』を行ったと発表しました(註)。ロシアン・ナイツに所属するSu-35を飛ばせば、防衛省が注目するのは間違いありません。プレスリリースには記載がなかったわけですが、これはロシア空軍の狙いが不明だからでしょう。むしろ写真を発表したことで、防衛省も関心を持っていることが明らかになりました。ロシア空軍が“宣伝”を狙ったのだとしたら効果は充分で、小泉氏の『外交活動』という指摘も頷けます」(同・軍事ジャーナリスト)
世界2位の空軍力
その一方で、最近のロシアン・ナイツの行動を見ると、不可解なことが浮かび上がるという。
「ロシアン・ナイツは11月にドバイで開かれた航空ショーに参加し、アクロバット飛行を披露しました。ロシア空軍はウクライナ戦争で相当な被害を被っているという指摘が根強かったため、世界の軍事関係者にその健在ぶりをアピールすることに成功しました。ところが、ロシアン・ナイツの本拠地はモスクワ郊外です。そこからドバイを経て極東に移動し、日本海と東シナ海の上空を飛ぶというスケジュールは、どう考えても普通ではありません。もし中国との共同飛行に護衛が必要なら、極東に配備されている他の戦闘機を使えばいいだけですから」(同・軍事ジャーナリスト)
わざわざロシアン・ナイツを極東に移動させたことから、ネット上ではロシア空軍は機体とパイロットのそれぞれが不足していると推測する投稿が目立つ。
だが、ロシア軍が保有する軍用機は約4000機。世界1位を誇るアメリカの約1万3000機とは相当な開きがあるとはいえ、第2位の空軍大国だ。
「ここで注意しなければならないことがあります。ロシア軍の軍用機は、稼働率の悪さが以前から指摘されていました。特に戦闘機はエンジンの耐久力が低いと言われています。おまけにメンテナンスに必要な予算、予備部品、人員を充分に投下できないことから、機体数は多くとも実際に飛ばせる機数は限られていると指摘されてきたのです」(同・軍事ジャーナリスト)
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