「死にたい」と言われたら、どうすればいいのか

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自殺したい人に言ってはいけないこと

「死にたい」と相談されたとき、我々はどうすればよいのだろうか。

「何か理由や悩みがあるでしょうから、まずは相手の話を聞いてあげてください。聞く側にも余裕がないといけないので、目安としては、3時間くらい時間を取れると良いですね(忙しい現代社会において、ハードルは高いですが……)。相手が沈黙することもあるでしょうけど、急かさずに聞くということが重要です」

 悩みの解決方法を提示することだけが正解ではなく、相手の話を否定せずに聞くことが何より重要だという。

「『死にたい』と言われると、そのことについて話すと相手が余計に死にたくなるのではと不安になり、話をそらしたくなるのが普通です。でも、『死にたい』という気持ちはそう簡単に他人に打ち明けられるものではなく、他ならぬあなただから勇気を持って伝えたのです。そんな重大な秘密を打ち明けたにも関わらず、話題をそらされたら孤独感を強めてしまいます。他にも、『頑張ろう』などと安易に励ましたり、『命を大切にしよう』といった一般的な価値観を押し付けたりすることも、いい影響を生みません」

死にたいと思うのは珍しくない

 一方で、話を聞く側の“しんどさ”にも理解が必要だ。

「心理カウンセラーが人の話を丁寧に傾聴できるのは、業務であり、終わりの時間が決まっているからです。仕事ではなく友人関係として関わる場合は、相談時間に終わりはなく、聞く側は疲弊します。自殺に関する授業で学生から『死にたいと何度も相談されるうちに疲れてしまって、相手にひどい言葉をかけてしまった』と相談されることがよくあります。24時間相手のことを心配していたら自分の体が持たないですが、だからといって勇気を持って相談してくれた友人との関わり合いを絶ってしまうと、孤立を深めさせ自殺に繋がるかもしれません。相談に乗るのがつらい時は、聞く側もしんどい心の内を聞いてもらえる人を作り、1人で抱え込まないようにすることが重要です」

 意外に思われるかもしれないが、すぐに精神科医やカウンセラーなど、専門家に繋げるべきかというと、必ずしもそうではないという。

「死にたいという気持ちを抱くことは、ものすごく珍しいことではありません。特に思春期、青年期には、2、3割程度が自殺について一度は考えると言われています。その全員が精神科医の診察を受けたり、精神科医が「自殺の可能性はない」と保証しなければ学校を休ませなければならないなどとすれば社会は成り立ちません。全てを特別扱いすることはリソースの都合上、不可能だとも言えます。身近な人に話を聞いてもらったりしながら時間を稼ぐ中で、死にたいという気持ちが少しが少しずつ薄まっていくこともあると思います」

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