「死にたい」と言われたら、どうすればいいのか
2022年に「いのちの電話」に寄せられた相談は、54万件を超える。最近では、電話だけでなくSNSを使った窓口も多数登場し、他人に悩みを相談することのハードルは低くなったと言えるだろう。『ウツパン―消えてしまいたくて、たまらない―』(著・有賀、新潮社刊)の監修者の1人で、自殺について研究する臨床心理学者の末木新教授(和光大学)は「専門家だけでなく、身近な人が相談に乗ることが自殺を防ぐ上で大切」と話す。
【「目が覚めると28時間経っていた」異例の“自殺コミック”を監修した専門家が明かす「NG描写」】のつづき
2、3割が「自殺したい」と考えたことがある
警察庁のデータをもとに厚生労働省自殺対策推進室がまとめた発表によると、2022年の自殺者は2万1881人で、前年に比べ874人(4.2%)増加した。男性の自殺者数は1万4543人と13年ぶりに増加し、女性の約2.1倍である。2003年以降続いていた自殺者数の減少も、2020年には11年振りに増加に転じた。
「日本の自殺者は、3万人の大台を超えていた2000年代から約1万人減り、自殺率も減少しています。ただし、発表された数字がどこまで実態を表しているかということには疑問が残ります。何をもって自殺とするかという判断基準は、各都道府県警察によってばらつきがあるからです。それを示すように『診断名不明確及び原因不明の死亡』とされる死亡者の割合は、都道府県によって10倍程度開きがあります。原因不明とされた中に自殺者が含まれている可能性は大いにあると思います(*)」 (末木教授、以下同)
末木教授によると、実際に自殺した人のおよそ10倍の人が「自殺したい」と考えたことがあるという。
「『これまでの人生で自殺したいと考えたことがあるか』と質問すれば、一般に2、3割程度の人が『ある』と答えます。とはいえ、死にたいという気持ちに心当たりがあるという人よりも、そうでない人の方が多いです。だとすれば、身近に死にたいと考えている人がいたときに、周りの人がどうすればいいかということを考えることは非常に重要だと思います」
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