「目が覚めると28時間経っていた」異例の“自殺コミック”を監修した専門家が明かす「NG描写」

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 漫画『ウツパン―消えてしまいたくて、たまらない―』(著・有賀、新潮社刊)は、冒頭のページに「ご自分のペースでお読みください」と注意書きがある。死にたいという思いに囚われ、自殺を試み、そこから立ち直るまでをリアルに描いたこの「自殺コミック」は、後追い自殺などを防ぐために精神科医や臨床心理学者らが監修している。監修者のひとりで臨床心理学者の末木新氏(和光大学教授)に話を聞いた。

りゅうちぇるさんの報道にあった「いのち電話」の意味とは マスコミと自殺の関係性】のつづき

自殺したい気持ちをリアルに描いた漫画

「ある日、目が覚めると28時間経っていた」―――『ウツパン』のパンダの姿で描かれる主人公はある日を境に突然「死にたい」気持ちに囚われるようになる。著者の有賀さんの実体験を綴ったこの漫画では、精神病院に入院したり、過量服薬をはかって緊急搬送されたりするなど、自殺企図者の行動や心情がリアルに描かれる。

「私自身も、自殺に関する書籍を書いたりしていますが、興味を持って読んでくださるのは、一部の人に限られていると感じます。『ウツパン』のようなコミックであれば研究者や専門家では届けられない幅広い層にも届くのではないでしょうか」(末木教授、以下同)

 自殺というセンシティブな内容のコミックだけあって、末木教授をはじめ太刀川弘和氏(筑波大学教授)、高橋あすみ氏(北星学園大学専任講師)ら専門家が監修に携わっている。監修にあたっては、どのような助言を行ったのだろうか。

「『ダイレクトに自殺方法を描かないように』というアドバイスをしました。例えば、ドアノブにロープがかかっている描写やビルの屋上で柵の外に立っている場面は、真似をすれば自殺してしまう可能性があるので控えるべきだと判断しました。それならば自殺に関する描写は全てNGなのかといえば、もちろんそうではありません。どこまでがセーフでどこからはアウトという明確な基準があるわけではなく、迷いながらの助言ではありました。芸術表現として必要なところやリアリティ のある描写のために必要なところもありますから、他の監修者の方と相談しつつ、『絶対にダメ』と分かる表現に関しては著者の方にお伝えしました。難しい判断ですから、作者、編集者、監修者が意見を出し合い、皆で考えていくことが重要だと思っています」

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