激増する「偽ブランド品」、ICチップにカード明細まで偽造 「コメ兵」プロ鑑定士が明かす真贋を見抜くポイント「意外と大切なのは“匂い”で……」
どこに注目して偽物を見抜くのか
――今回いらしていただいた林さんは、鑑定歴20年のベテランだそうですね。近年の偽ブランド品の特徴、傾向などありましたら教えてください。
林:先ほど山内が申しあげた通り、とにかく巧妙になっています。ルイ・ヴィトンの場合、以前は本体に製造番号が記載されていたのですが、それがなくなった替わりにICチップが入っています。ところが、それすらも偽造される有様で、いたちごっこが続いています。
――具体的にどのように鑑定を行っているのでしょうか。
林:偽物を作る業者に知られたくないので、話せる範囲内でお話ししますと、意外と大切なのは“匂い”です。ルイ・ヴィトンは本物特有の匂いがあります。いわゆるステッチなどの“縫い目”も、結構違いができやすい部分ですね。ただ、縫い目にも年代によって差異があり、荒く仕上がっている年代もあるんですよ。経験をもとに査定をすることが大切です。
――熟練の経験がものを言うわけですね。
林:あとは、持ち込んできた人の雰囲気も案外大切です(笑)。男性の方が女性もののバッグを大量に持ってきたら、明らかに違和感があるじゃないですか。鑑定中に様々な会話をしながら、怪しくないか、見極めるようにしています。ただ、持ち込みが多い日などは短時間で鑑定をしないといけないので、緊張の連続ですよ。
偽ブランド品を手にしないためにできること
――鑑定士の労力は大変なものがありますね。
林:そこで、当社ではAIを使った判定システムを開発しました。改良を重ねてかなり精度が高くなっており、写真を撮るだけで型番や品名などを検索することができますし、ブランドによっては99%正確に判定できている実感があります。ただ、それでもはっきりわからない高精度な偽物があるのも事実で、やはり最終的には人の手と目が頼りなのです。僕はまだまだAIには負けないです。
――偽ブランド品を買わないようにするために、注意すべきことは何でしょうか。
山内:当社が言うのはおかしな話かもしれませんが、百貨店などの直営店で新品を買えば、偽物を掴まされることは100%ありません(笑)。では、中古がダメかというとそんなことはありません。グローバルな視点からも見直されていますし、当社が扱っている中古ブランド品は丁寧な検品を経て店頭に並べています。したがって、信頼できる専門店で購入すれば、基本的に安全だと思います。
――フリマサイトやネットオークションはいかがでしょうか。
山内:フリマサイトは鑑定機能がありませんから、偽物が含まれている確率は必然的に高くなると思います。個人的には、信頼できる店で専門のスタッフと話しながら買うのが一番だと思いますよ。安心が担保されていますし、何より高額な商品ですから、実物を目にして、手に取って買う方が、失敗は少ないのではないでしょうか。
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