テレビに未練はない、後はさんまちゃんに…北野武監督が最後に欲しい映画賞は何か

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 北野武監督(76)の6年ぶりの新作映画「首」が11月23日に公開され、1カ月が経とうとしている。公開4週目(~12月17日)の観客動員ランキングでは第10位(興行通信社)に踏みとどまっている。

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 構想30年という「首」の企画は、巨匠・黒澤明監督(1910~1998)から「北野くんがこれを撮れば、『七人の侍』と並ぶ傑作が生まれるはず」とお墨付きが与えられていたという。

 そういえば、今から30年ほど前に放送されていた深夜のバラエティ番組「北野ファンクラブ」(フジテレビ:1991~1996)では次のように話していた。

たけし:本能寺の変の直後に豊臣秀吉が行った“中国大返し”では、兵隊は鎧なんか着けてたら走れないから、みんな裸。それで各地にマラソンの給水所みたいに食い物が用意されてたんだって。これだけで面白い映画にできると思うんだ。

 実際「首」には、かつて語っていた通りのシーンがあった。もっとも、それだけでは2時間11分の映画にはならなかったようで、荒木村重の謀反から本能寺の変、中国大返しを経て、明智光秀が討たれる山崎の合戦までが描かれる。その間、タイトル通り“生首”がこれでもかとスクリーンを飛び交う。さながら戦国版「アウトレイジ」のようだ。民放テレビマンは言う。

「製作費が15億円といいますから、お客さんに入ってもらいたいんでしょう。公開前の11月18日にはかつてレギュラーだった『情報7daysニュースキャスター』(TBS)、公開後の26日には『誰も知らない明石家さんま 第9弾』(日本テレビ)、12月3日には『まつもtoなかい』(フジ)など、たけしさんは後輩の番組にも出演して宣伝に努めていました。今作が儲からなければ、今後、新作にお金を出してくれるところがなくなってしまいますからね」

「座頭市」は超えられない?

 公開から4日後の初週の成績は、興収3億9000万円、動員26万3000人で3位につけた。2週目は興収7億1000万円、動員50万1000人で5位、3週目は興収8億8000万円、動員66万2000人で7位、4週目は興収9億9000万円、動員69万7000人で10位という状況だ。

「同日に公開された『翔んで埼玉~琵琶湖より愛を込めて』(武内英樹監督)が4週目で興収17億万円、動員124万5000人の7位ですから、それには及ばないものの、観客動員はイマイチと言われる北野映画としては入っているほうでしょう」

 これまでの興収トップは、2003年公開の「座頭市」(28億5000万円、動員200万人)だ。

「17年の前作『アウトレイジ 最終章』は興収15億9000万円だったので、これを超えるかどうかというところ。『座頭市』超えは厳しいでしょう」

「座頭市」は三大映画祭のひとつ、ヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞(監督賞)を受賞した。「首」はこれに続く時代劇だ。

「時代劇は海外でウケるという計算もあったのだと思います」

 もっとも「座頭市」と違って、「首」に出てくる織田信長や明智光秀、豊臣秀吉、徳川家康は、日本人なら誰もが知る歴史上の人物だ。例えば、加瀬亮(49)が演じた信長は尾張弁丸出しで凶暴なドSなので、これまで演じられた信長像とのギャップで日本人にはウケる。外国人にもそれがわかるのだろうか。

「ジャパンにもとんでもないキングがいたのだなあ、と思われるかもしれません。もっとも、たけしさんが秀吉というのも、信長と比べて年齢的におかしいですから、その辺りは気にしていないのでしょう。それでも加瀬が演じた狂気の信長は迫力がありました。武将たちが敵の首を求めるのに対し、農民出身の秀吉は首には興味がないという対比はよく描けていたと思います。さらに、武将たちの男色シーンも海外ウケを狙ったものかもしれません」

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