レアな三世代型ホームドラマ…「コタツがない家」が高く評価される重要な意味

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 日本テレビ「コタツがない家」(水曜午後10時)が最終回を迎える。近年は激減した3世代型のホームドラマ(シニア、ミドル、ティーン)だったが、評判が高かった。理由を考察する。【高堀冬彦/放送コラムニスト、ジャーナリスト】

ありふれた話なのに面白い

 このドラマで描かれているのは、どこにでも転がっていそうな話である。

 主人公のウェディングプランニング会社代表の深堀万里江(小池栄子・43)と漫画家の夫・悠作(吉岡秀隆・53)の「離婚問題」、2人の1人息子で高校3年の順基(作間龍斗・21)の「進路問題」、万里江の実父・山神達男(小林薫・72)との「同居問題」などである。ありふれた話なのに面白いのは金子茂樹氏の書く脚本と出演陣に力があるからだ。

 主要登場人物のキャラクターも分かりやすく、ややこしい人物は1人もいない。これも成功の理由に違いない。頭を空っぽにして観られる。まず、万里江のキャラを表す言葉を紹介したい。

「うちの男たちの面倒はすべて私が見ていこうと思います」(万里江、第4回)

 ランチを買うキッチンカーの店主・霞田和恵(野々村友紀子・49)にこう言った。万里江は一家の大黒柱になることを全く苦にしていないし、家族の尻ぬぐいもするという意思の表れだった。

 悠作は好対照である。

「植木屋も間が悪いんだよなぁ」(悠作、第1回)

 植木屋が来るので、万里江から留守番を頼まれたが、マッサージ屋に行ってしまい、叱られた時の言葉。とんでもない言い草である。頼まれ事をやらない、家事もやらない。漫画家を11年半休んでおり、1年中ヒマなのに。一方で隣家の小学生・賢雄(廣末裕理・9)とのラジコン勝負には溌剌と臨む。良く言えば自由人。世間から見ると、ごくつぶしである。

万里江とダメな男たち

 順基はかわいげのない男だ。

「大谷翔平が恋愛したら、3刀流かよ」(順基、第8回)

 とりあえず和菓子職人を目指しながら、アイドルの道も歩もうとする 。さらに同級生の原木田れいら(平澤宏々路・16)と付き合い始めたところ、万里江から「2つのことを追い掛けると中途半端になるので、1つに絞れって、あれほど言ったのに分からないの!」と怒られた。これに対する反論である。

 順基は学校の成績は振るわないようだが、皮肉と屁理屈は天下一品。家族内の雰囲気を一言でブチ壊す逆ムードメーカー。

「娘と離婚してやってくれ」(達男、第7回)

 悠作が休業状態にある漫画家を辞めると聞いた達男が、お灸を据えるつもりで口にした苦言。悠作は真に受けてしまい、ショックで家出。離婚を考え始める。いくらお灸でも酷い言葉だった。

 達男は慶應大から一流商社に就職した元エリートであるため、他人を格下に見ている。だから悠作にも心ない言葉を投げ掛けられたらしい。

 この性格が災いし、2年前には万里江の実母・清美(高橋惠子・68)に離婚された。ただし、悠作の家出後に「人間って、この年から変われるのかな……」(達男、第9回)と漏らしているので、自分の言動に問題があることは自覚しているらしい。達男は70歳。本当に変われるのかどうかは不明だ。

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