安倍昭恵さんが夫の政治資金「3・4億円」を非課税で”相続” 庶民の怒りに専門家は「法改正は極めて難しい」
森喜朗氏の政治団体
2つ目は「そもそも政治家の政治資金が非課税で相続されていいのか」という問題だ。これに関しては特に野党議員から批判の声が上がっている。
「念頭に置かれているのは政治家の世襲問題です。国会議員だった父や母が引退、子供が同じ選挙区で当選した場合、その資金管理団体を“世襲”することができます。世襲議員は当選当初から豊富な政治資金を懐に入れることが可能な一方、世襲ではない議員は“裸一貫”の状態から政治資金を集めなければなりません。資金力の差は明らかで、『これではフェアとは言えない』と指摘されているのです」(同・記者)
安倍晋三氏には“後継者”となる親族が存在しなかったため、妻の昭恵氏が政治団体を継承した。同じような状況だった森喜朗元首相は、政治家を引退しても政治団体の代表を務めていたことが問題視された。
「週刊新潮は2017年1月26日号に『政治は引退しても黒い政治資金で稼ぐ「森喜朗」を許せるか?』との記事を掲載しました。森氏は政治家を引退しても資金管理団体の代表を務め、パーティー券などの収入を計上していました。週刊新潮の取材に、ある税理士は『課税を免れる目的で資金管理団体を利用していると言われても仕方がない』と問題視しています。その後、総合情報誌のFACTAが19年3月号で、森氏の政治団体の解散を報じました」(同・記者)
相続税議論の問題点
政治資金の問題に詳しい日本大名誉教授(政治学)の岩井奉信氏は「まず政党支部の残金について、昭恵さんの処理は問題だと言えます」と指摘する。
「政党支部は、国が政党に政党交付金を助成し、その交付金から政党が所属議員の取り分を送るために存在します。原資は国民の税金ですから、毎日新聞などの報道が事実であれば、安倍晋三氏の死後、自民党山口県第4選挙区支部の代表を引き継いだ昭恵さんは、政党交付金の残金を速やかに国庫へ戻すべきでした。人件費などで使い切ったと伝えられており、これが法律に触れることはないとはいえ、問題のある行為だったと言えるでしょう」
一方、政治団体の“継承”と政治団体間の資金移動については「非常に難問です」と岩井氏は言う。
「この問題に多くの国民が怒っています。とはいえ、一部の議員が相続税の適用を主張していることは、妥当ではないと言わざるを得ません。安倍さん個人が集めた政治資金は、『政治活動に役立ててほしい』という趣旨から支払われたものです。半ば公的な意味を持つお金であり、安倍さんが個人的に得た収入とは異なります。安倍さんの個人的な資産であれば相続税を課すのは当然ですが、安倍さんに委ねられた政治的な資金にまで相続税を課すのは税の目的から逸脱しています」
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