景気悪化でEUの足を引っ張るドイツ 極右政党が市長選で勝利、第一党になる日も時間の問題か
第4四半期に景気後退入りする可能性
米S&Pグローバルが12月15日に発表した12月のユーロ圏の購買担当者景気指数(PMI、速報値)は総合で47となり、前月に比べて0.6ポイント低下した。悪化は2カ月ぶりで、好不況の境目である50を7カ月連続で下回った。
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ユーロ圏の第3四半期の国内総生産(GDP、改定値)は前期に比べて0.1%減少しており、第4四半期に景気後退入りする可能性は極めて高いと言われている。
ユーロ圏最大の経済規模を誇るドイツ経済が足を引っ張っている。
ドイツの12月のPMIは46.7と前月に比べて1.1ポイント低下した。市場は「48.2に改善する」と予測していただけにドイツ経済の不調が改めて認識された形だ。第3四半期のGDPも前期に比べて0.1%減少している。インフレが続く中、家計の節約志向が強まり、ドイツの内需が冷え込んでいることが災いしている。
ドイツ経済に対する海外の見方も厳しさを増している。独貿易・投資新興機関は「ドイツに進出する外国企業の数は今年、前年に比べて約2割減少する」との見方を示した(12月5日付ロイター)。
独大手ファンド運用企業ユニオン・インベストメントは「中国経済への依存度が高いことがドイツにとって重大なリスクになりかねない」と指摘している。
来年の予算編成に「違憲」の判断
ドイツ連邦銀行(中央銀行)は「GDPは今年0.1%減少する」としているが、来年の見通しはさらに暗いと言わざるを得ない。11月15日、憲法裁判所から「違憲」の判断を下されたことで、ドイツ政府は来年の予算の編成に苦慮しているからだ。
問題になったのは、新型コロナ対策で未利用になった約600億ユーロ(約9.8兆円)を気候変動対策の基金に転用した2021年の補正予算だ。憲法裁判所はこの措置を基本法(憲法に相当)に違反すると判断した。
ドイツ政府は予算のうち未執行分の大半の財政支出を凍結し、補正予算の編成を余儀なくされた。来年の予算についても約170億ユーロ(約2.8兆円)の歳入不足となるなど大混乱に陥っている。
このことを重く見たドイツの主要経済研究所は、来年の成長予測を相次いで下方修正している。ドイツ経済研究所は12月13日「予算危機による不透明感で来年のGDPは0.5%減少する。最悪の場合、1%の減少もありうる」との悲観的な見通しを示した。
筆者が危惧しているのはドイツで不動産バブルが崩壊しつつあることだ。
独キール世界経済研究所によれば、ドイツの第3四半期の戸建て住宅価格は前年同期に比べて12%下落した。マンションなどの分譲物件も11%下落した。ドイツではベルリンやフランクフルトなどの主要都市で軒並み市況が悪化しており、市場関係者は「底が見えない」と警戒感を強めている(11月27日付日本経済新聞)。
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