「ご当地ガチャ」が31万個も売れている理由とは? 根底に「イジられて喜ぶ快感」が
各地の名物をキーホルダーにしてガチャガチャで売る「ご当地ガチャ」。その企画を手がける会社の社長さんが話題の映画「翔んで埼玉~琵琶湖より愛をこめて~」に出演した。作中で売られる「大宮ガチャ」は、現実世界でもバカ売れ。理由の根っこには「イジられて喜ぶ快感」という、映画と通底するモノがあった。
「“こんなガチャがあったら面白いんじゃない?”と半分悪ノリで始めました」
こう語るのはJR大宮駅西口の複合商業ビル「アルシェ」を運営する中島祥雄社長(55)。大宮ド真ん中の人である。ビル運営の一方でガチャも手がけるワケは、
「都市間競争が激化する中、大宮自体を盛り上げないとわれわれも立ち行かない。大宮を面白い街にするため」
と話す。大宮では有名なナポリタンのうまい老舗喫茶店「伯爵邸」の看板などをアクリルキーホルダーにしたところ大人気に。ガチャ一回しは300円。次に浦和や与野などの名所、名物もガチャにして、評判は県外にまで及んだ。ちなみに浦和はラーメン店「娘々(にゃんにゃん)」、与野はスーパー「与野フード」などが採用された。
「冗談と思っていたら本当のオファーだった」
すると東京の東銀座、宮城の仙台、静岡の沼津、浜松などから「うちもやりたい」とお声が。東銀座の名店「喫茶アメリカン」、仙台のゴミ分別呼びかけキャラクター「ワケルくん」、沼津の老舗メーカー「トミヤコーヒー」、浜松の地元人気パン広報ガール「かにぱんお姉さん」など、コアなラインアップが注目され、全シリーズの累計販売個数は11月末で31万個に上る。
そんな中島社長は「翔んで」の中で、大宮駅そばの掘っ立て小屋で「大宮ガチャ」を売りながら、暴動を起こした民衆に責め立てられる役で登場する。
その場面は武内英樹監督の思い付きだったといい、
「冗談と思っていたら本当のオファーだった」
と中島氏。
「大学時代に上京した地方出身の同級生から埼玉県民は下に見られていました。当時、電車の中吊り広告には“車が大宮ナンバーじゃここに入れないよ”という趣旨のコピーまで躍ってまして。地元埼玉に募らせてきたそんな苦い思い出や呪縛から解放してくれた大恩人が『翔んで』なんです」
映画で知った「ディスられることの快感」は、ガチャが売れる理由と相通ずるものがあると考察。映画の今回の舞台・滋賀県をガチャにする野望も描き、「日本埼玉化計画」が進行中だ。