「3億円事件の後、急に金回りが良くなった男を取り調べると」 捜査員は「犯人の1人」と確信
少年の遺書
少年の遺書には、概要こう記されていた。
〈死ぬというのは美しい。この世は醜悪だ。父も母も世間体ばかり考え、虚栄心だけで生きている〉
最後に、鈴木元主任警部は捜査をこう顧みた。
「私は、“捜査は広げ過ぎてはいけない”“ツボを押さえた捜査をすれば、絶対、ホシにつながる”と上層部に意見したが、聞き入れてもらえなかった。それを徹底していれば、必ず犯人に行き着いたはずなんだ。本当に悔しいね。私は、今でもあの少年が真犯人だったと思っています。そう思わなきゃ、刑事じゃないよ」
静かな語り口だが、細い金縁眼鏡の奥の眼光には、未だ刑事としての矜持が宿っているように見えた。
前編【「3億円事件」担当刑事が悔やむ「モンタージュ写真そっくりの少年」】からのつづき
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