プーチン大統領が「年末イベント」で見せた勝利への余裕 ロシア国内は「愛国ごますり政策」の嵐…「愛国的でないと村八分にされる空気感」

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 年末恒例の「特大記者会見」と「国民との対話イベント」を2年ぶりに開催したプーチン大統領は、終始、余裕の笑みを浮かべていた。ロシア国内ではこの1年で反戦の声はすっかり鳴りを潜めてしまったという。「度重なる弾圧と愛国ごますり政策に疲れ、愛国思想へ転向する若者も増えている」と現地在住の日本人ジャーナリストは語る。

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街から消えた「反戦」の声

「あなたの影武者が大勢いるというのは本当か」

 12月14日に開催された「国民との対話イベント」に登場したのは、プーチン氏そっくりのAIだった。当の本人は藪から棒のこの質問にこう言って退けた。

「私の顔と声を真似ているようだが、この声で話せる唯一の人物は私だ」

 昨年はイベント自体を中止したプーチン氏が、一転、こんな手の込んだ芝居まで打てるようになったのも、戦局がロシア有利に進んでいるからだろう。ウクライナは6月から大規模反転攻勢に打って出たものの、全く領土を奪還できていない。10月から続くイスラエルとパレスチナの間で起きた紛争も、欧米各国の関心をウクライナからそらす効果をもたらす追い風だ。

 この情勢に「国内に潜む反戦派は争う気力を失いつつある」とモスクワ在住の日本人ジャーナリストは語る。

「数カ月以上、反戦デモのニュースを見かけていません。戦争が始まってしばらくは、若者たちが消えるSNS『テレグラム』などを使って反戦集会をよく呼びかけていましたが、そんな話題もすっかり耳にしなくなりました。デモをやっても主催者はすぐに捕まり長期間拘束されてしまう。それが繰り返されるうちに呼びかける人がいなくなってしまったのです。6月に『プリゴジンの乱』が鎮圧されてからは反戦派の国民はみな気力を失ってしまった」

ごますり政策を提唱する政治家・官僚たち

 代わって台頭してきたのが「愛国思想」である。国民への洗脳を後押ししているのが、プーチンのご機嫌取りに必死な政治家や官僚たち。彼らは戦争が始まってから、競うように「愛国法案・政策」を導入してきた。

 わかりやすいプーチンごますり政策の最たるものが愛国教育。教育省が音頭を取って9月から導入した新しい歴史教科書には、ウクライナ侵略を正当化する文言やロシアに制裁を課す欧米批判が盛り込まれている。15~18歳を対象にした基礎的な軍事訓練も始まった。子供たちは実際に自動小銃や軍用ドローンを手に取って実技も学ぶ。

 内務省は外国人にまでロシア政府に忠誠を求める法案の提出を準備中だ。「ロシアに入国する外国人に『忠誠宣誓書』のようなものにサインをさせる内容になるらしい」(前出・ジャーナリスト)。今もモスクワに支局を置く大手メディアは、今後はロシア国内でプーチン政権に批判的な記事を書けなくなるのでないかと懸念している。

 今年6月には「対日戦勝法案」が可決された。ロシアでは9月3日を「第2次大戦終結の日」としてきたが、その名称を「軍国主義日本への勝利と第2次大戦終結の日」に変更するというもの。プーチン派の議員が昨年6月にロシアに制裁を課した日本への対抗措置の一つとして法案を提出した。

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