ついに安倍派に斬り込んだ最強の捜査機関「東京地検特捜部」、黒歴史からの復活劇

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証拠改ざんは2010年

 臨時国会閉会を受け、自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる問題で、東京地検特捜部はパーティー収入のキックバックを受けていた安倍派の国会議員本人への任意の事情聴取を始めている。検察の悲願とされるリクルート事件以来の大型疑獄。このタイミングで着手した背景と検察の黒歴史、そして落とし穴についてレポートする。

 まずは検察の黒歴史について振り返っておこう。

「検察を激震させたのが2010年9月の証拠改ざん事件でした。いわゆる郵便不正事件をめぐって、大阪地検特捜部は厚労省の村木厚子元局長を虚偽有印公文書作成などの罪で起訴しましたが、特捜部が押収した証拠が改ざんされていたことがわかり、担当のエース検事が証拠隠滅容疑で、特捜部長と特捜部副部長が犯人隠避容疑で逮捕されました」

 と、社会部デスク。大林宏検事総長が同年末に辞任する事態に至った。

捜査報告書の偽造は2011年

「村木氏をターゲットにした結論ありきの捜査で、それに沿った供述を得られない中で現場は無理に無理を重ねたようです。ある検察幹部によれば、“検察が狙っていたのはある政治家だったが、それが難しいとなって村木氏をターゲットにしたようだ。彼女をあげたいならもう少し広い目で判断すべきだったのでは? 少なくとも本件は無理筋だろう”と言っていたことがあります」(同)

 これに追い討ちをかけたのが、2011年12月の陸山会事件に絡んでのものだった。

「民主党代表時代の小沢一郎氏に関する捜査で、東京地検特捜部の検事が虚偽の捜査報告書を作成していたことがわかり、担当検事や特捜部長らが辞職を余儀なくされるなどしました。東京の特捜部で発生した不祥事という意味では大阪の証拠改ざんより衝撃度が大きかったですね」(同)

 大阪、東京の特捜部で相次いだ不祥事を受け、法務検察は暗黒の時間を迎えることになる。

独自捜査の自粛

「基本的に特捜部は独自捜査を自粛しました。証券取引等監視委員会などの告発案件を受けることが主流になったのです。特捜部不要論さえ声高に叫ばれた中で目立つことは良くなかった。取調べの録音録画もこの時に導入が一気に進みましたね。総長を辞任した大林氏の後を受けた笠間治雄検事総長が粘り強く現場を説得して回っていたようです。“そもそも録音録画できないというのは自信がないからでしょう”というふうに色んなところで発言していていましたね。それが本音だったのか、録音録画なしに検察の未来はないと腹をくくっていたのかハッキリとはしませんが」(同)

 空気が変わり始めたのは、2017年9月に森本宏氏が特捜部長に就任した頃からだ。

「異例の2年10ヶ月の在任中、国会議員3人、日産のカルロス・ゴーンCEOや霞ヶ関のエリート官僚の身柄を取るなど、政官財の疑獄に斬り込みました」

 国会議員の逮捕は10年ぶり。今振り返れば「特捜部の喪が明けた」瞬間だったのかもしれない。

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